
「デザインは美しいのに、全然反応がない…」
こんな悩みを抱えているLP運営者、実は驚くほど多いんです。その原因の多くは「セールス文章で書かれていない」という根本的な問題にあります。
今回は、LPにおけるセールス文章の重要性と、それを軽視することで起こる失敗について、率直にお話しします。
セールス文章でないLPは「美しいだけで売れない」
デザインだけでは人は動かない
多くの事業者がLPを制作する際、デザインに注力します。美しいビジュアル、洗練されたレイアウト、トレンドを取り入れた配色。確かにこれらは重要です。しかし、デザインだけでコンバージョンは生まれません。
LPの本質は「ユーザーに行動してもらうこと」です。購入、申し込み、問い合わせ、資料請求…何らかのアクションを起こしてもらわなければ、LPは機能していないのと同じです。
そして、ユーザーを行動に導くのは、美しいデザインではなく「説得力のあるセールス文章」です。
コンバージョン率が大きく下がる現実
セールス文章でないLPと、しっかりとしたセールス文章であるLPでは、コンバージョン率に大きな差が出ます。
数字で表してみる
- セールス文章でないLP:CVR 0.5%〜1%(平均)
- セールス文章であるLP:CVR 2%〜5%(平均)
同じアクセス数でも、コンバージョン率が2倍、3倍、場合によっては5倍以上の差がつくこともあります。LP改善事例でも、セールスライティングの改善だけでCVRが最大6倍になったケースが報告されています。
月間1,000人がLPに訪問している場合を考えてみましょう。
CVR 0.8%の場合:8件のコンバージョン
CVR 3.2%の場合:32件のコンバージョン
4倍の差です。これが毎月続けば、年間で約300件の差になります。単価が1万円なら年間300万円、10万円なら年間3,000万円の売上差です。
この差を生み出しているのが、セールス文章なのです。
※セールス文章は、セールスライティングとも呼ばれています。
セールス文章のトーンは業種・ブランドで変える
ここでは、セールスライティング(セールス文章)のトーンは、業種やブランドによって書き分けることが大事であるということをご紹介します。
すべてのビジネスに「売り込み」が適しているわけではない
ここで重要なポイントがあります。セールス文章といっても、すべてのビジネスで同じトーンで書けばいいわけではありません。事業やブランドのコンセプトによって、トーン(テンション)を調整する必要があります。
売り込みが強すぎるとマイナスになる業種
- アパレル・ファッション
ハイブランドや高級路線のアパレルで「今すぐ買わないと損!」「期間限定セール!」といった強い売り込みをすると、ブランドイメージが損なわれます。代わりに、ライフスタイルの提案、着こなしの紹介、世界観の演出といった「憧れを喚起する」アプローチが効果的です。 - 美容室・サロン
「絶対に来てください!」という押しの強さより、「こんな雰囲気で、こんな技術があります」という情報提供と、「あなたに合ったスタイルを提案します」という寄り添う姿勢が重要です。 - 高級飲食店・レストラン
「安い!お得!」を前面に出すと、高級感が失われます。料理へのこだわり、シェフの哲学、食材のストーリーといった「価値を伝える」文章が適しています。 - 建築・インテリア
感性やセンスが重視される分野では、実績やポートフォリオを見せながら、「私たちの世界観」を伝える方が効果的です。
逆に、売り込みが強くても問題ない業種
- 健康食品(後述の薬機法に注意)
- BtoB向けサービス(効率化、コスト削減など)
- 教育・資格取得サービス
- 通販・ECサイト
これらの業種では、明確なベネフィット、数字による証明、お客様の声などを使った「説得型セールス文章」が有効です。
ブランドイメージとセールスのバランス
重要なのは、ブランドイメージを保ちながら、必要なセールス要素を入れることです。
例えば、高級美容室のLPでも、以下のセールス要素は必要です。
- どんな悩みを解決できるか(問題提起)
- 他店との違い・強み(差別化)
- 実際のお客様の変化(ビフォーアフター)
- お客様の声(社会的証明)
- 予約方法・料金(明確な行動喚起)
これらを、押しつけがましくならないトーンで書けば、ブランドイメージを損なわずにコンバージョンを高められます。
健康食品や医療の特殊事情:薬機法との戦い
ここでは法律によってセールスライティングを調整することを解説します。
ベネフィットを語りすぎると法律違反に
健康食品やサプリメント業界には、特有の難しさがあります。それが薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)です。
セールスライティングの基本は「ベネフィット=将来を見せること」です。しかし、健康食品で「この商品を飲めば、○○が治ります」「△△に効きます」と書くと、薬機法違反になる可能性があります(なります)。
薬機法で禁止されている表現例
- 「血圧を下げる効果がある」
- 「糖尿病の症状を改善する」(断定表現)
- 「ガン予防に効果的」(根拠が不十分な場合)
- 「アレルギー症状を軽減する」(医薬品的な効能効果)
引用元:薬機法対策!使ってはいけない表現一覧と推奨される言い換えフレーズを紹介 – ならなかま法律事務所
これらを書いてしまうと、最悪の場合、販売停止や罰金といった処分を受けることになります。
セールスライティングの基本要素:型よりも本質
ここでは、セールスライティングの基本要素をご紹介します。
さまざまな「型」に共通する本質的要素
セールスライティングには、PASONA、AIDMA、BEAF、QUESTなど、さまざまな「型」があります。代表的なもので、10種類以上の型があります。
しかし、どの型を使うかに固執する必要はありません。重要なのは、すべての型に共通する本質的な要素を理解することです。
セールス文章に必須の7つの要素
- 将来を見せること(ベネフィット)
この商品・サービスを利用すると、どんな未来が待っているか - そうなる根拠・理由
なぜそのベネフィットが実現できるのか、論理的な説明 - 社会的証明
お客様の声、導入実績、受賞歴など、第三者の評価 - 共感
ターゲットの悩みや課題に寄り添う姿勢 - 問題提起
現状のままでいることのリスクや不安を指摘 - 差別化
競合との違い、自社だけの強み - クロージング(行動喚起)
具体的に何をすればいいか明確に伝える
これらの要素が揃っていれば、どの型を使っても効果的なセールスライティングになります。逆に、型通りに書いても、これらの要素が欠けていれば効果は出ません。
ある程度のクオリティがあれば細部は気にしなくていい
完璧主義に陥る必要はありません。セールス文章は、ある程度のクオリティがあれば、細かいところまで神経質になる必要はありません。
むしろ重要なのは、
- 明確なベネフィットが伝わっているか
- 信頼できる根拠があるか
- お客様の声が掲載されているか
- 行動を促すCTAがあるか
これらの基本を押さえていれば、文章の細かい表現や構成の順番が多少違っても、大きな問題にはなりません。
逆に、細部にこだわりすぎて「完璧になるまで公開しない」というのは、機会損失になります。まずは60点でもいいからリリースし、データを見ながら改善していく方が賢明です。
セールス文章は動画にも使われている
ここでは、動画マーケティングにもセールスライティングのノウハウが使われていることを解説します。
動画マーケティングの台本にもセールスノウハウが
最近、動画広告やYouTube広告が増えていますが、これらの動画にもセールスライティングのノウハウが組み込まれています。
効果的な動画広告の構成を分析すると、以下のような流れになっています:
動画広告の典型的な構成(セールスライティングベース)
- 冒頭3秒で問題提起
「こんなお悩みありませんか?」でターゲットを引き付ける - 共感と問題の深堀り
「実は、それは○○が原因なんです」 - 解決策の提示
「そこで開発されたのが、この商品です」 - ベネフィットの提示
「これを使うと、こんな未来が待っています」 - 社会的証明
「すでに10万人が利用しています」 - 行動喚起
「詳しくはこちらをクリック」
これは、まさにPASONAやAIDMAといったセールスライティングの型そのものです。
LPへ誘導する前の動画でセールスが完結している場合も
興味深いのは、LPに誘導する前の動画で、すでにセールスが完了しているケースが多いことです。
動画で十分に商品の魅力を伝え、問題提起し、共感を得て、社会的証明を示す。そしてLPでは、より詳しい情報と申し込みフォームを提供するだけ。
この場合、LPはシンプルで構いません。すでに動画でセールスは済んでいるからです。
動画+LPの役割分担
- 動画:問題提起、共感、ベネフィット、社会的証明(セールスの本体)
- LP:詳細情報、料金、FAQ、申し込みフォーム(情報提供と受付)
この構造を理解していれば、LPに何を書くべきか、動画に何を入れるべきかが明確になります。
逆に、動画でセールスをせず、LPでもセールス文章がない場合、どこにもセールスが存在しないという最悪の状況になります。これでは、誰も購入しません。
Webデザイナーは知らない、セールス文章の世界
なぜLPにセールス文章がないことが多いのか
ここで根本的な問題に触れます。なぜ、多くのLPにセールス文章がないのでしょうか。
答えは簡単です。Webデザイナーはセールスライティング(セールス文章)のノウハウを知らないからです。
多くのLP制作は、Webデザイナーが担当します。彼らは美しいデザインを作るプロですが、セールスライティングのプロではありません。
デザイナーが得意なこと
- 美しいビジュアルデザイン
- 読みやすいレイアウト
- トレンドを取り入れたデザイン
- ユーザビリティの高い構成
デザイナーが苦手なこと
- 顧客心理の理解
- セールス文章の執筆
- マーケティング戦略
- コンバージョン最適化
もちろん中には、セールスライティングのノウハウを取得されてるWebデザイナーさんもいらっしゃいます。ですが、ごく少数です。ほとんどの方は、存じ上げていないので、結果として、見た目は美しいが「何も売れないLP」が量産されていきます。
外注でも内製でも必須のテクニック
セールスライティング(セールス文章)は、LP制作において外注するにせよ、内製するにせよ、絶対に必要なテクニックです。
外注する場合
制作会社に「セールスライティングでお願いします」と明確に伝える必要があります。
理想的なのは、以下の役割分担です。
- セールスライター:文章とメッセージ設計を担当
- Webデザイナー:そのメッセージを視覚化
両方の専門家が関わることで、「売れるLP」が完成します。
内製する場合
まず経営者やマーケティング担当者がセールスライティングを学ぶ必要があります。本を読む、セミナーに参加する、実際に書いてみる。この学習プロセスを省略してはいけません。
その上で、デザインツールを使ってLPを作るか、Webデザイナーに依頼します。
セールス文章なしでLPを運用してはいけない
繰り返しますが、セールス文章のノウハウなしでLPを運用するのは、お金をドブに捨てるようなものです。
広告費をかけてアクセスを集めても、セールス文章でなければコンバージョン率が低くなります。制作費をかけて美しいLPを作っても、売上が上がらなければ意味がありません。
さらに深刻なのは、セールス文章でないと、ABテストや改善もできないということです。
セールスライティングでないとABテストも改善もできない
改善の起点がない
LPの運用では、継続的な改善が重要です。ABテストを実施し、データを分析し、より効果的なLPにブラッシュアップしていく。これがLP運用の王道です。
しかし、セールスライティングでないLPでは、何を改善すればいいか分からないのです。
改善できる要素の例
- キャッチコピーのパターンA vs パターンB
- ベネフィットの表現方法の違い
- お客様の声の配置位置
- クロージング文の強弱
- CTAボタンの文言
これらはすべて、セールスライティングの要素です。セールスライティングがなければ、テストする対象もありません。
結果として、「デザインの色を変える」「画像を差し替える」といった表面的な改善しかできず、コンバージョン率の根本的な向上は望めません。
データ分析の精度が下がる
セールスライティングでしっかり書かれていれば、ヒートマップやGoogle Analyticsのデータから、多くのことが分かります。
分析できる内容
- どの部分で多くのユーザーが離脱しているか
- どのベネフィットが読まれているか
- お客様の声のセクションまで到達しているか
- CTAボタンの前でどれくらい読まれているか
これらのデータをもとに、「問題提起が弱いから冒頭を強化しよう」「お客様の声まで読まれていないから、もっと早い位置に配置しよう」といった改善ができます。
しかし、セールスライティングでないLPでは、データを見ても「すべてがおかしい」「全部変える必要がある」「ユーザーが何を求めているか」「どこで納得できていないか」が分かりません。改善の手がかりが得られないのです。
PDCAが回らない
LP運用で最も重要なのは、PDCAサイクルを回すことです。
正しいPDCAサイクル
- Plan(計画):仮説を立てる(この文章を変えたらCVRが上がるはず)
- Do(実行):ABテストを実施する
- Check(確認):データを分析する
- Action(改善):結果をもとに次の施策を決める
このサイクルを回すには、明確な仮説が必要です。そして、その仮説の多くは、セールスライティングに関するものです。
セールスライティングでないLPでは、仮説が立てられず、PDCAが回りません。結果として、いつまで経っても成果が出ないLPのまま、広告費だけが消えていくことになります。
セールスライティングを学ぶべき3つの理由
ここまで読んで、「セールスライティングを学ばなければ」と思った方も多いでしょう。最後に、なぜセールスライティング(セールス文章)を学ぶべきなのか、改めて整理します。
理由1:コンバージョン率が劇的に向上する
セールスライティングの有無で、CVRは2倍、3倍、場合によっては5倍以上変わります。同じ広告費でも、売上が大きく変わるのです。
理由2:LPだけでなく、あらゆるマーケティングに使える
セールスライティングのスキルは、LPだけでなく、以下のすべてに応用できます。
- メルマガ
- SNS投稿
- 広告文
- プレゼン資料
- 営業トーク
- チラシ・DM
- 動画の台本
つまり、一度学べば、マーケティング全般に使える一生もののスキルなのです。
理由3:外注先の良し悪しが判断できる
セールスライティングを理解していれば、制作会社やライターの提案が適切かどうか判断できます。「この文章では売れない」と気づくことができ、無駄な投資を避けられます。
セールスライティングはLPの心臓部
ここまで読んでいただいたあなたに、最後に本音をお伝えします。
セールスライティングでないLPは、心臓のない状態と同じです。
どんなに美しい外見(デザイン)でも、心臓(セールスライティング)がなければ機能しません。
今すぐ実践すべきこと
既存のLPをチェックする
セールスライティングの7要素(ベネフィット、根拠、社会的証明、共感、問題提起、差別化、クロージング)が入っているか確認
欠けている要素を追加する
完璧でなくてもいいので、まずは基本要素を入れる
セールスライティングを学ぶ
本を1冊読む、セミナーに参加する、実践してみる
外注先を見直す
デザインだけでなく、セールスライティングもできる制作会社を選ぶ
セールスライティングは、LP成功の必須要素です。これなしでLPを運用するのは、地図なしで航海に出るようなものです。
あなたのLPが高いコンバージョンを生み出せるよう、今日からセールスライティングを学び始めましょう。