
測量や登記という、不動産の根幹を支える仕事。 松本悟土地家屋調査士事務所を率いる松本さんは、このお堅いとも思われがちな業界に、前職の京セラで培った「戦略的な視点」と、先代から受け継いだ「商売人のセンス」を持ち込みました。
今回のインタビューでは、独立のきっかけとなった意外なエピソードから、コロナ禍という混乱期に開業を決めた経営判断、そして「マニュアル化が難しい仕事」にどう向き合い組織を動かしているのか、幅広くお話を伺いました。
一歩ずつ、着実に。 境界線を引くという仕事の先に、彼が見据えている「信頼」の形とは。松本さんの歩んできた道のりと、これからの挑戦を伺います。
起業の背景:コロナ禍でのスタート

つちや: 今日はよろしくお願いします。改めて、今の会社を立ち上げてどれくらいになるんですか?
松本: ちょうど6年目です。 令和2年の4月1日……まさに最初の緊急事態宣言が出た日が、うちの開業日なんですよ。
つちや: うわ、大変な時期に重なりましたね。今は何名くらいで?
松本: 11名になりました。 去年の年商が8,000万で、今期は1億を目標にしています。
つちや: 順調じゃないですか。もともと測量で独立しようと決めていたんですか?
松本: 開業前の2年半、師匠のところで修行してたんです。 最初の1年は「資格はあっても未経験なんだから、まだ登録するな」という師匠の方針で。 じっくり基礎を叩き込まれました。
京セラから「シャツ屋」のルーツで独立へ

つちや: 修行の前は、全く別の業界にいたんですよね。
松本: はい、京セラで営業や企画の仕事をしていました。
つちや: そこから独立を志したのは、何かきっかけが?
松本: もともと父がここで自営業のシャツ屋をやっていて、母方の祖父も大きな繊維工場を経営していたんです。 だから「いつかは自分で商売をするんだろうな」という感覚が、エスカレーターに乗るみたいに自然にありました。
つちや: なるほど、家系的に起業が当たり前の環境だったんですね。
松本: ただ、何で起業するかは決めていなくて。 測量の道に進んだのは、実は「偶然」なんです。
「15分で80万!?」測量業界の衝撃

つちや: 偶然、というと?
松本さん: 最初は大学の同級生の川端と、飲食店の空き時間を貸し出すシステムを作ろうとしてたんです。 そのために宅建の資格を取ったんですが、川端が本業で忙しくなってしまって。
つちや: あの川端さんと、そんな繋がりだったんですね笑
松本さん: そうなんです。それで、手持ち無沙汰で調査士の勉強を始めたら受かってしまって。 そんな時、父の土地の境界確定が必要になったんですが、見積もりを見たら驚きました。 160万円くらいしたんですよ。
つちや: 160万!
松本さん: 仕事ぶりを見ていると、当時は1日測って、あとは15分くらいハンコをもらい歩くだけに見えてしまって(笑)。 「これ、めっちゃ儲かるボロい商売やん!」って思っちゃったのが、この業界に入ったきっかけです。実際やってみると、それほどボロいものでも簡単でもないんですが笑
つちや: ははは!動機が素直ですね。
大企業の壁と、チャンスとしての不況

つちや: 京セラという大企業を辞めることに不安はなかったんですか?
松本さん: 当時、30歳という節目で、「35歳までやってみてダメなら、どこかの企業に再就職すればいい」と腹をくくりました。
つちや: それでコロナ禍の真っ只中に。
松本さん: 僕は新卒1年目がリーマンショックだったんです。 底を打ったあとのV字回復を経験していたので、世の中が混乱している時こそ、機材を安く揃えられたり、営業の種をまけたりするチャンスだと思いました。
口コミで広がった「松本事務所」の強み

つちや: 最初はどうやってお客さんを増やしたんですか?
松本さん: 実は、、、まともな営業はしてないんです。
つちや: え、そうなんですか?
松本さん: 修行時代にお世話になったハウスメーカーの担当者が、僕の独立と同時期に店長、さらに支店長へと出世されて。 その方が「松本事務所ええで」と口コミで広めてくださったんです。
つちや: 結局、仕事ができるから人が付いてきたんですね。
松本さん: ありがたいことです。 今の課題は内部の組織化ですね。 調査士の仕事はイレギュラーが多くてマニュアル化が難しいんですが、そこをAIなども活用しながら整えていきたいと思っています。
つちやへアドバイス

つちや: 最後に、僕の印象も聞かせてもらえますか?(笑)
松本さん: つちやさんは、とにかくデータ取りと分析がすごい。 Excelでコツコツまとめられているのを見て、川端とも「あの人は本物だ」と話しています。
つちや: 嬉しいな。悪いところはどうですか?
松本さん: 勉強会をずっと無料でやってるじゃないですか。 正直、ちょっと怖いです(笑)。「何のためにやってんねん」って。
つちや: 怪しいですよね(笑)。
松本さん: 多少はお金を取ってもらったほうが、逆に僕らも安心しますよ。 募金箱でも置いたらどうですか?
つちや: 考えてみます(笑)。
松本さん: 1万円くらい入れる社長、ザラにいると思いますよ。
士業の未来を作る、新たな挑戦

松本さん: 今後は「JLP(Japan Legal Partner)」という団体で、新しく起業した士業の支援や、リクルート活動にも力を入れていきたいんです。
つちや: 素晴らしいですね。
松本さん: またぜひ、士業向けのマーケティング講師としてつちやさんをお呼びしたいです。
つちや: ぜひ!今日はありがとうございました。

プロフィール

松本 悟(まつもと さとる)
株式会社松本 代表取締役 / 松土地家屋調査士
「商売人家系」に育ち、京セラ株式会社での営業・企画職を経て独立。実家の境界確定を目の当たりにしたことで、測量・登記の専門性と重要性に開眼し、土地家屋調査士の道へ。
令和2年4月1日、コロナ禍の緊急事態宣言下という逆境で開業。「混乱期こそチャンス」という信念のもと、前職で培った戦略的な視点と迅速な対応で信頼を築き、現在は11名のスタッフを抱える組織へと成長させる。
測量・登記の枠を超え、不動産の「困りごと」などをワンストップで解決できる窓口として、多くのハウスメーカーや顧客から厚い信頼を寄せられている。現在は一般社団法人JLPの理事も務め、次世代の士業育成にも尽力している。
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