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やってはいけない生成AI活用:社外秘の情報を入力する

つちや たけし
1,000社以上の店舗集客と会社集客をサポートしてきたWebマーケティングプランナー。複数のYouTubeチャンネル運営経験を持ち、複数のSNSやサイトを運営、実践的なマーケティング戦略の立案・実行を得意とする。「理論より実践」をモットーに、現場で使える具体的なノウハウを提供している。

生成AIの活用が中小企業にも急速に広がっています。

ChatGPT、Copilot、Geminiなどのツールは、業務効率化の強力な武器として注目されています。

メール文面の作成、アイデア出し、プログラミングコードの生成など、生成AIは様々な業務シーンで活躍しています。

「まだ当社はアナログ中心だから関係ない」と思っている経営者の方もいらっしゃるかもしれませんが、実は従業員がすでに個人的に使用しているケースも少なくありません。

しかし、生成AIの便利さの裏には重大なセキュリティリスクが潜んでいます。

それは、社外秘の情報を生成AIに入力してしまうことです。

「AIに相談するだけなら問題ないのでは?」と考えている方は要注意です。

生成AIへのデータ入力は、想像以上に大きな情報漏洩リスクを伴います。

本記事では、なぜ社外秘情報の入力が危険なのか、実際にどのようなリスクがあるのか、そして中小企業が安全に生成AIを活用するための具体的な方法について、詳しく解説します。

従業員が悪気なく顧客名簿や機密情報をコピー&ペーストしている可能性もあります。企業を守るためにも、ぜひ最後までお読みください。

目次

中小企業における生成AI活用の現状とリスク

ここでは、中小企業における生成AI活用の現状とリスクを考えてみます。

急速に普及する生成AI:ビジネス現場での活用事例

生成AI、特にChatGPTの登場により、ビジネス現場は大きく変化しました。中小企業でも、生成AIを活用した業務効率化が進んでいます。

実際の中小企業における活用例をご紹介します。

  • 工務店:「顧客へのサンキューレターの文面作成」「提案書のたたき台作成」
  • 飲食店:「新メニューのネーミング案出し」「SNS投稿文の作成」
  • 士業:「法律条文の平易な言葉への変換」「契約書のチェックポイント整理」

これらは生成AIの適切な活用方法です。時間を大幅に短縮でき、自分では思いつかないアイデアが得られることもあります。業務効率化の観点から、積極的な活用をお勧めしています。

しかし、使い方を誤ると、企業の存続を脅かすほどの重大な情報漏洩事故につながる危険性があります。

「軽い相談」が重大な情報漏洩につながる危険性

生成AIは、チャット形式で人間と対話しているかのように使えます。「このデータを分析して」「この議事録をまとめて」といった指示も簡単に行えます。

この「人間的な対話形式」が逆にリスク要因となっています。

信頼できる秘書や同僚に相談しているような錯覚に陥り、ついつい機密性の高い情報を入力してしまうケースが多発しています。

危険な入力例

  • 「来期の売上目標(未発表)に基づいて戦略を考えて」
  • 「このA社との契約書に不利な条件がないかチェックして」
  • 「顧客リストを分析して傾向を教えて」

これらはすべて情報漏洩リスクの高い行為です。

なぜなら、入力したデータがAIの学習データとして利用され、第三者に開示される可能性があるからです。

社外秘情報を生成AIに入力してはいけない3つの理由

生成AIへの社外秘情報入力が危険な理由を、セキュリティの観点から詳しく解説します。

理由1、AIの学習データとして利用されるリスク

多くの無料版生成AIや、セキュリティ設定を行っていないAIツールは、ユーザーが入力したデータを「学習データ」として利用する利用規約になっていることがあります。(なっていないことや切り替えられたりすることもあります。)

つまり、あなたが入力した機密情報を、AIが学習し、データベースに蓄積してしまうのです。

最も深刻な問題は、第三者がAIに質問した際に、あなたが入力した機密情報が回答の一部として表示される可能性がある点です。

情報漏洩の仕組み:具体例

例えば、ある飲食店が自社の「秘伝のソースレシピ」を生成AIに入力し、「このレシピをさらに改善する方法は?」と質問したとします。

生成AIは、その材料配合や調理法を学習データとして記憶します。(記憶して良いという設定になっていれば)

その後、全く無関係の第三者(競合店など)が生成AIに質問します。

「美味しいソースを作るための秘訣は?」

すると生成AIは、学習した情報を基に回答します。

「効果的な手法として、隠し味に〇〇を配合する方法があります」

このようにして、あなたの企業秘密が競合他社に知られてしまう可能性があります。

実際には単純に情報がそのまま開示されるわけではありませんが、確率はゼロではありません。これを「AIの学習による情報漏洩」とここでは呼びます。

理由2、クラウド上にデータが保存されるリスク

AIの学習利用以前の問題として、クラウドサービスである以上、外部サーバーに入力履歴(ログ)が保存される点も重大なリスクです。

「自社管理外のサーバー」に「機密情報」を保存することは、それ自体がセキュリティリスクとなります。

想定されるリスクシナリオ

  • AIサービス提供企業がサイバー攻撃を受け、ハッキングされる
  • 従業員のアカウントが不正アクセスされ、乗っ取られる
  • AIサービス企業の内部関係者による情報持ち出し

これらのケースでは、入力履歴(プロンプト履歴)から企業の重要機密が第三者に閲覧される危険性があります。

理由3、法的責任とコンプライアンス違反のリスク

個人情報保護法や業界ごとの守秘義務規定に違反する可能性があります。特に、顧客の個人情報や取引先との秘密保持契約(NDA)対象の情報を生成AIに入力した場合、法的責任を問われ、損害賠償請求されるリスクがあります。

実際に発生した生成AI利用による情報漏洩の事例

「そのようなことは映画の中だけの話では?」と考える経営者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、生成AIを通じた情報漏洩は現実に発生しています。海外で実際に起きた代表的な事例をご紹介します。

【事例1】大手電機メーカーのソースコード流出リスク

ある大手企業のエンジニアが、プログラムコードのデバッグをChatGPTに依頼しました。「このコードのバグを見つけてほしい」という質問とともに、開発中の機密プログラムのソースコードをそのまま入力してしまいました。

その結果、そのプログラムコードがAIの学習データとして取り込まれてしまった可能性があります。競合他社が類似の質問をした際に、そのコードの一部が回答として表示される情報漏洩リスクが発生したのです。

この企業は事態を重く見て、直ちに社内でのChatGPT利用を一時禁止する措置を取りました。

【事例2】議事録作成を通じた経営機密の流出リスク

会議の録音データを文字起こしし、「この議事録を要約してください」と生成AIに入力する。一見便利で効率的な活用方法に見えます。

しかし、その会議が「M&A(企業の合併・買収)」に関する極秘会議であった場合はどうでしょうか。

「A社を〇〇億円で買収する方向で交渉中」といった未公開の経営機密情報が、公表前の段階で外部サーバーに送信されることになります。

このような情報が外部に漏れた場合、株価への影響やインサイダー取引の疑いなど、企業経営に致命的なダメージを与える可能性があります。

中小企業での典型的な危険事例

大企業だけでなく、中小企業でも同様のリスクが存在します。以下のような使い方をしていませんか?

「取引先の〇〇社の△△様は細かい性格で対応が難しい。どのようなメール文面にすれば良いか?」

一見、業務相談のようですが、これは取引先担当者の個人情報および評価情報の漏洩に該当します。「〇〇会社の△△様は細かい性格」という情報が外部に流出することで、信頼関係の毀損や契約解除のリスクにもつながります。

このような「ちょっとした相談」の積み重ねが、重大な情報漏洩事故を引き起こす可能性があるのです。

生成AIに入力してはいけない情報の具体的リスト

では、具体的にどのような情報が入力禁止なのでしょうか。従業員への周知徹底のため、このリストを社内ガイドラインとして活用してください。

「この程度なら大丈夫だろう」という個人判断のズレが最も危険です。明確な基準を設けることが重要です。

【NGレベル:高】絶対に入力禁止

情報の種類具体例なぜダメなのか
個人情報顧客の氏名、住所、電話番号、メールアドレス、従業員のマイナンバー、給与明細、採用応募者の履歴書など個人情報保護法違反になる可能性大。一度流出したら回収不可能。
機密情報(自社)未発表の新商品情報、独自の製造ノウハウ、仕入れ原価、決算前の財務データ、パスワード、APIキーなど会社の競争力が失われる。セキュリティ事故に直結する。
機密情報(他社)取引先との契約書、NDA(秘密保持契約)を結んでいる資料、他社から預かったデータなど契約違反で損害賠償請求されるリスクがある。信用問題に関わる。

【NGレベル:中】注意が必要(マスキング推奨)

  • 具体的な固有名詞が入った議事録
    → 「A社」を「取引先」に、「山田さん」を「担当者」に書き換えるならOKな場合も。
  • 社内の人間関係の悩み
    → 誰のことかわかるような書き方はNG。「一般論として」相談するならOK。
  • 現在進行形のプロジェクトの詳細
    → プロジェクト名や具体的な数字は伏せる。

判断基準として、「新聞の一面に掲載されても問題ない情報かどうか」を自問自答することが有効です。

公開されたら困る情報、社会的信用を失う情報は、生成AIへの入力を避けるべきです。

生成AIを安全に活用するための対策

ここまでリスクについて解説してきましたが、「生成AI全面禁止」は適切な対応ではありません。

なぜなら、生成AIは業務効率化の強力なツールだからです。競合他社が生成AIを活用して生産性を3倍、5倍に向上させている中で、自社だけがアナログな手法に固執していては、市場競争で不利になります。

重要なのは、「安全な活用方法」を理解し、適切に実践することです。

対策1、オプトアウト設定の確認と有効化

多くの生成AIツールには、「学習データとして利用しない」設定(オプトアウト)が用意されています。

例えば、ChatGPTの場合、設定画面に「モデルの改善のためにデータを使用する」という項目があります。

これをOFF(無効)にすることで、入力データがAIの学習に使用されることを防げます。(※サービスによって設定方法は異なるため、必ず各ツールの規約と設定を確認してください)

また、企業向けの有料プラン(ChatGPT Enterpriseなど)を契約すると、デフォルトで「学習データには使用しない」という規約になっているケースがほとんどです。

セキュリティ対策への投資として、企業向けの有料プランの導入を検討する価値は十分にあります。

対策2、情報の匿名化(マスキング)の徹底

どうしても生成AIに分析させたいデータがある場合は、固有名詞をすべて記号やプレースホルダーに置き換える方法が有効です。

【悪い例】
「株式会社〇〇の田中社長宛に、謝罪メールを書いて。先日の納期遅れの件で。」

【良い例】
「取引先の社長宛に、謝罪メールを書いて。先日の納期遅れの件で。相手の会社名は[会社名]、相手の名前は[相手氏名]としてプレースホルダーにして。」

こうやって作ってもらって、最後にWordやメールソフトに貼り付けてから、[会社名]の部分を本当の名前に書き換える。

これなら、AIには「誰宛か」は伝わりません。ひと手間かかりますが、この「ひと手間」が会社を守ります。

対策3、APIを利用したツールを使う

ちょっと専門的な話になりますが、Webブラウザで使うチャット画面ではなく、「API」という仕組みを通してAIを使うと、デフォルトで「データは学習に使われない」という規約になっていることが多いです。

社内で独自のチャットツールを作ったり、API経由で動く安全なツールを導入したりするのも一つの手です。

中小企業が今すぐ実施すべき3つのルール作り

経営者の皆様、明日からでもすぐに社内ルールを策定してください。「なんとなく気をつけて」では誰も守れません。

以下のシンプルな3ステップで十分です。

ルール1:「入力可能な情報・禁止情報」を明確に定義する

先ほどのリストを参考に、「顧客情報は絶対禁止」「社内の評価情報も禁止」「公開済みのホームページ情報はOK」といった、〇×表を作成して全社員に配布しましょう。

オフィスの壁に貼り出すことも効果的です。

ルール2:会社が認めたツールのみ使用を許可する

「便利そうだから」という理由で、従業員が個人的に無料の未承認生成AIアプリをスマートフォンにインストールして業務に使用する。これが最も危険なパターンです。

社内への明確な指示例

  • 「業務で生成AIを使用する場合は、会社が契約した指定アカウントを使用すること」
  • 「それ以外の無料ツールや未承認アプリに業務データを入力することは禁止」

これを社内規定として明文化してください。

ルール3、最終確認と責任は必ず人間が負う

これはセキュリティとは異なる観点ですが、生成AIが作成した文章やデータが必ずしも正しいとは限りません。(「ハルシネーション」と呼ばれ、AIが事実と異なる情報を生成する現象があります)

社員へ伝えるべきメッセージ

  • 「AIが生成した内容だから大丈夫だと思った」という言い訳は認めない」
  • 「生成AIを使用することは許可するが、最終責任は担当者自身にある」

このように伝えることで、適切な緊張感を保ち、責任ある利用を促進できます。

正しく活用すれば、生成AIは中小企業の強力な武器になる

生成AIは、料理で言うと包丁に例えられることがあります。

美味しい料理を作るためには不可欠な道具ですが、使い方を誤ると大怪我をします。子供にそのまま渡したら危険ですよね。

しかし、だからといって「包丁は危険だから料理禁止!」とはなりません。正しい持ち方、使い方を教えることが重要です。

中小企業こそ、生成AIという強力な武器を正しく活用することで、大企業に対抗できる競争力を獲得できます。

過度に恐れて使用を避けるのも、無防備に使用して情報漏洩事故を起こすのも、どちらも企業にとって損失です。

「正しく理解し、安全に活用する」

これが生成AI時代を生き抜く最善の方法です。まずは経営者自身が、利用している生成AIツールの設定画面を確認することから始めてみてください。

もし「自社でどのようなガイドラインを作成すれば良いか分からない」「安全な導入方法について相談したい」ということがあれば、専門家へのご相談をお勧めします。

生成AI時代を、安全かつ効果的に活用していきましょう。

つちや たけし
1,000社以上の店舗集客と会社集客をサポートしてきたWebマーケティングプランナー。複数のYouTubeチャンネル運営経験を持ち、複数のSNSやサイトを運営、実践的なマーケティング戦略の立案・実行を得意とする。「理論より実践」をモットーに、現場で使える具体的なノウハウを提供している。
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