
生成AIは便利です。文章のたたき台、要約、アイデア出し、翻訳、議事録の整形など、日々の業務を一気に加速できます。
しかし同時に、AIに個人情報を入力してしまうと、取り返しがつかないことが起こってしまう可能性があります。
ここでいう「個人情報」は、氏名や住所だけではありません。
組み合わせれば個人が特定できる情報、社内ID、顧客番号、相談内容、医療や金融の情報なども含みます
特に、FP・士業・医療・教育・人事などの分野は、入力すればするほどリスクが上がります。
この記事では、AIに個人情報を入力してはいけない理由と代わりの方法を解説します。
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そもそも「AIに入力した個人情報」は、どこへ行くのか
生成AIに入力した内容は、あなたのパソコンの中だけで完結していません。
一般的に、入力した内容は、サービス提供者側のシステムで処理され、ログとして保持されたり、品質改善・不正検知・障害解析などの目的で参照可能な状態になったりします。
つまり、入力した時点で「自分の管理下から離れる」 という理解が必要です。
サービス側の不具合・設定ミス・権限管理の事故・アカウント乗っ取り等が重なると、入力内容が意図せず第三者へ露出する可能性があります。
これは「AIが悪いからダメだ」という感情論で片付くことではなく、クラウドサービス全般にある現実的な課題です。
個人情報を入力してはいけない理由
ここでは個人情報を入力すると発生するリスクについて考えてみます。
1、情報漏えいリスク
入力内容が、ログ・履歴・学習データ・サポート対応など、何らかの形で保存・参照される可能性がある以上、漏えいの可能性はゼロになりません。
「うちは小規模だから狙われない」は成立しません。漏えいによる事故は規模ではなく、設定ミスやヒューマンエラーで起きることが多くあります。
2、二次利用のリスク
個人情報の取り扱いは「本人の同意」「利用目的の限定」が基本です。
生成AIに入力すると、本人が想定していない目的(要約・分類・文章生成・社内共有)に転用されることがあり、被害が大きくなる可能性があります。
3、法務・契約違反リスク(顧客・取引先との約束)
NDA(秘密保持契約)や委託契約、規約・規定で「第三者提供」「再委託」に制約があるケースは多いです。
生成AIの利用が「第三者提供」に該当しうる以上、個人情報だけでなく、顧客情報・未公開情報も含めて入力NGとなります。
入力NGにもかかわらず生成AIに入力しては、顧客や取引先との約束を破ってしまい、契約違反となってしまうことがあります。
4、信頼毀損リスク
仮に法的にアウトでなくても、
「顧客の相談内容、具体的なデータをAIに入れていた」
これだけで信用を失う場面があります。特に相談業(FP・士業・カウンセリング等)は致命傷になります。
「個人情報」の具体例
どこからアウトか?
以下は、原則として生成AIに入れてはいけないものです。
- 氏名、住所、電話番号、メールアドレス
- 生年月日、家族構成、勤務先、学校名(組み合わせで特定される)
- 顧客番号、会員ID、社員番号、免許証番号、マイナンバー等の識別子
- 口座情報、カード情報、保険証券番号、年金番号、ローン残高など金融情報
- 健康情報、診療情報、障害情報(要配慮情報に該当し得る)
- 相談内容そのもの(「誰が何を悩んでいるか」が個人情報になり得る)
そして危ないのは、単体では匿名に見えても、
- 「大阪在住・40代・会社員・子2人・住宅ローン○○万円・年収○○」のように、組み合わせで個人が浮かび上がるパターンです。
よくある「気軽に入力してしまう例」(業務あるある)
- 顧客から届いた個人情報の入った相談メールを、そのまま貼り付けて要約させる
- 個人情報の入った面談メモをそのまま貼り付けて「提案書を作って」と依頼する
- 名簿や顧客リストを貼って「セグメント分けして」
- 個人の情報の入った苦情対応の全文を貼って「返信文を考えて」
- 社内の人事評価コメントや面談記録を貼って「整理して」
全部、やりがちですが危険です。
「作業を早くするためのAI」が、最も漏えいしやすい入口になりやすいからです。
どうしてもAIに相談させたいときの「安全な代替手順」
ここでは具体的な実務で使える方法を挙げてみます。安全に使える代替方法はないのか。ポイントは、入力しないのではなく、入力できる形に変換することです。
手順A:匿名化(置換)してから使う
- 氏名 → Aさん
- 住所 → 関西圏
- 会社名 → 企業C
- 金額 → レンジ化(例:300万円台、月3万円台)
- 日付 → 月単位、四半期単位
個人名や企業名は、匿名に。金額なども伏せ字や概算などに変換して使います。そして、置換表(Aさん=山田太郎)を作るなら、AIの外(ローカルや社内管理下)に置きます。
手順B:要約してから入れる(原文を入れない)
「この文章を要約して」ではなく、先に人間が編集して個人情報を抜いてからAIに入力するようにします。
悪い例:顧客メール全文貼り付け
良い例:
- 相談者属性:40代共働き、子2
- 相談テーマ:住宅購入と教育費の両立
- 制約:月の可処分○万円、リスクは取りたくない
この形式なら、AIの得意な「整理・構造化」だけを使えます。
手順C:合成データに変換して使う
提案書・ブログ・教材づくりなら、実データではなく「典型的なパターン」で十分です。
実在の人物でなく、モデルケース(架空)をAIに渡して作れば、安全性が高くなります。
組織で必ず決めるべきルール(個人で頑張らない)
個人情報の入力事故は、個人の注意力だけでは防げません。ルールと仕組みが必要です。
最低限、社内で決めると事故が減ります。
- 入力禁止情報の定義(個人情報・顧客情報・社外秘・未公開情報)
- 利用OKの範囲(公開情報、社内公開OK情報、匿名化済み)
- 利用ツールの指定(承認済みのAIのみ)
- 監査・ログ・教育(新人ほど事故を起こす)
- 例外フロー(どうしても必要な場合の承認手順)
生成AIは「個人情報を入れない」だけで安全度が一段上がる
生成AI活用で一番やってはいけないのは、個人情報をそのまま入力することです。
入力した瞬間に、自分の管理下から離れ、漏えい・二次利用・契約違反・信用毀損のリスクが同時に立ち上がります。
一方で、匿名化・要約・合成ケース化の3つを徹底すれば、生成AIは実務でより使えるようになります。
「便利だから使う」ではなく、「安全に使える形をととのえてから使う」。現時点では、これが一番強い運用方法です。
