
今回は「客単価を上げる方法」について、効果のある手法を厳選してお伝えします。
理論だけでなく、実際に多くの企業で結果を出してきた「やってみてよかったもの」だけを中心に解説していきます。
安売りしないで価値で販売する方法は、別ページで解説しています。
客単価を上げることの基本
客単価を上げることは、長期的にビジネスをやっていくにあたっての基本です。また非常に重要なことです。
客単価とは何か?なぜ重要なのか?
そもそも客単価とは何なのか。解説しますと、
客単価の計算式
客単価 = 商品単価 × 一度に買う点数(購入点数)
となります。
客単価を上げることの基本とは?
売上をアップさせる3つの要素は、
売上 = 商品単価 × 購入点数 × 購入回数(訪問回数)
となります。これのどれかをアップさせれば、売上は上がります。
ちなみに、新規顧客獲得のコストは既存顧客への販売コストの5倍と言われますが、実際の現場では10倍以上のコストがかかることも珍しくありません。
ここでは、客単価をアップさせることに焦点を当てて書いていますが、購入回数つまり訪問回数をアップさせても売上は伸びます。
つぎに、客単価(商品単価と購入点数)をアップさせればどういうメリットがあるのか?いったん整理しておきます。
客単価の向上がもたらす3つのメリット
客単価をアップさせるメリットを3つご紹介します。改めて整理しておくとどれも大事ですね。
1. 利益率の大幅な改善
客単価がアップすると、当然利益率が改善されます。儲かります。だからこそ、固定費を節約せずとも経営していけるようになるわけです。また、販促費や営業経費も払えるようになります。そのため、安心して経営ができるようになります。
- 既存の固定費を減らさなくて良い
- マーケティングコストがまかなえる
- 営業コストも払える
2. 顧客との関係性強化
利益がしっかり出ていれば、さらに顧客との関係性を強化することも可能です。ニーズを叶えるために設備投資や接客レベルの向上を目指していけます。客層を分けて、上得意客さんに手厚くサービス提供することも可能となるでしょう。
- より深いニーズの把握
- 顧客満足度の向上
- ロイヤルカスタマーの育成
3. 競合優位性の確立
利益が出ていれば、競合に対して強みをさらに強めることができます。価格競争せずとも販売していけるように、ブランド力を高めたり、強みのある商品開発なども可能です。
- 価格競争からの脱却
- 付加価値の創出
- ブランド力の向上
客単価を上げる15の効果的手法
ここでは、客単価を上げる具体的な方法をご紹介します。
基本戦略(すぐに実践可能)
1. アップセル戦略|上位商品への誘導
定義: 顧客が検討している商品よりも、より高価格・高機能な商品を提案する手法
実践例:
- 「こちらの上位モデルでしたら、○○の機能も付いて長期的にはお得になります」
- 「今なら上位プランが20%オフでご利用いただけます」
成功のポイント:
- 費用対効果を具体的な数値で示す
- 現在の商品との違いを明確に説明
- 導入後のメリットを具体的にイメージさせる
2. クロスセル戦略|関連商品の同時提案
定義: メイン商品と関連性の高い商品を同時に購入してもらう手法
実践例:
- ホームページ制作 + SEO対策
- スーツ + シャツ + ネクタイ
- スマートフォン + ケース + 保護フィルム
3. バンドル販売|セット商品の提案
効果的なバンドル販売のコツ:
- セット価格は単品合計の15〜25%オフに設定
- 組み合わせる商品は補完関係にあるものを選ぶ
- 「期間限定」や「数量限定」の要素を加える
心理学を活用した高度な戦略
4. 松竹梅の法則|3段階価格設定
人間の心理特性を活用した価格戦略
多くの人は3つの選択肢がある時、真ん中を選ぶ傾向があります。これを「松竹梅の法則」と呼びます。
設定例:
- 松(高価格):10万円
- 竹(中価格):7万円 ← 最も売りたい商品
- 梅(低価格):4万円
実践のコツ:
- 最も売りたい商品を「竹」に設定
- 「松」は利益率の高い商品に
- 価格差は1.5〜2倍程度に設定
5. アンカリング効果の活用
定義: 最初に提示された情報が後の判断に影響を与える心理効果
活用方法:
- 高価格商品から順番に提案
- 「通常価格○○円のところ、今なら△△円」
- 競合他社の高価格事例を最初に紹介
6. 希少性の演出
人は希少なものに価値を感じる心理を活用
実践例:
- 「残り3点限り」
- 「今月末までの限定価格」
- 「初回の方限定」
顧客体験向上による客単価アップ
7. パーソナライゼーション|個別最適化提案
顧客の状況に合わせたカスタマイズ提案
実践方法:
- 購買履歴の分析
- 顧客の業界・規模に応じた提案
- 利用シーンに合わせた商品組み合わせ
8. 専門性の訴求|エキスパート感の演出
信頼性向上による価格受容性の向上
実践方法:
- 専門用語を適度に使用
- 業界の最新トレンドを交えた提案
- 他社事例や実績の具体的紹介
9. 体験価値の創出
商品そのものではなく、体験に対する対価という意識の醸成
実践例:
- 導入後のサポート体制の充実
- 定期的なフォローアップサービス
- 専用窓口の設置
デジタル時代の客単価向上戦略
10. データ分析に基づく最適化
購買パターンの分析による戦略的アプローチ
分析すべきポイント:
- 商品間の購買相関性
- 顧客属性別の購買傾向
- 季節性や時系列での変化
11. リターゲティング広告の活用
一度接触した顧客への継続的なアプローチ
効果的な手法:
- 閲覧商品の上位バージョンの広告表示
- 関連商品のレコメンド広告
- 限定オファーの提示
12. メールマーケティングによるアップセル
既存顧客へのタイムリーな提案
実践例:
- 購入後のフォローアップメールで関連商品提案
- 利用状況に応じたアップグレード提案
- 季節やイベントに合わせた特別オファー
業界別特化戦略
13. 飲食店における客単価向上
メニュー戦略
- 高単価メニューの視覚的訴求(写真の大きさ、配置)
- サイドメニューやドリンクの積極的提案
- コース料理の設定とアップセル
14. 小売店における客単価向上
陳列とレイアウト戦略
- 関連商品の近接配置
- レジ前商品の戦略的選定
- 店舗導線の最適化
接客力向上
- コーディネート提案スキルの向上
- 顧客ニーズの深掘りテクニック
- タイミングを見極めた追加提案
15. ECサイトにおける客単価向上
システム活用による自動化
- レコメンドエンジンの最適化
- カート内商品に基づく関連商品表示
- 送料無料ラインの戦略的設定
サービス業の事例
業種: 士業事務所
施策前: 平均案件単価 15万円
施策後: 平均案件単価 28万円(87%向上)
主要施策: サービスメニューの階層化、継続サービスの提案
小売業の事例
業種: 家電量販店
施策前: 平均客単価 12,000円
施策後: 平均客単価 18,500円(54%向上)
主要施策: 関連商品の提案強化、保証サービスの拡充
客単価向上の注意点とリスク管理
よくある失敗パターン
1. 押し売り感の演出
- 顧客ニーズを無視した強引な提案
- 一方的な商品説明
- 価格メリットのみの訴求
対策: 顧客の課題解決を最優先に、真の価値提供を心がける
2. 短期的な成果への偏重
- 一時的な売上増加のみを追求
- 顧客満足度の軽視
- リピート率の低下
対策: 長期的な顧客関係を重視した戦略立案
3. 商品知識の不足
- 表面的な商品説明
- 顧客質問への不適切な回答
- 競合商品との差別化不明確
対策: 継続的な商品知識向上と競合分析
成功する客単価向上の5つの原則
1. 顧客視点の徹底
- 顧客の真のニーズの理解
- 課題解決への焦点
- 長期的なパートナーシップの構築
2. 段階的なアプローチ
- 急激な変化は避ける
- 小さな改善の積み重ね
- 効果測定と継続的改善
3. データに基づく意思決定
- 感覚ではなく数値での判断
- A/Bテストの実施
- ROIの定期的な測定
4. スタッフ教育の重要性
- 統一された提案手法の確立
- ロールプレイングによる実践練習
- 成功事例の共有と横展開
5. 技術とアナログの融合
- デジタルツールの効果的活用
- 人間らしい温かい接客の維持
- 顧客との感情的つながりの構築
2025年以降の客単価向上トレンド
AI・機械学習の活用拡大
予想される変化:
- パーソナライゼーションの高度化
- リアルタイムでの最適提案
- 予測分析による先回り提案
サブスクリプションモデルの普及
従来の一回買い切りから継続課金へのシフト
- 初回単価は下がるが、LTV(生涯顧客価値)は向上
- 継続的な関係性構築の重要性増大
- アップセル・クロスセルの機会拡大
体験価値重視の加速
モノからコトへの価値観変化
- 商品そのものより体験への対価
- ストーリーテリングの重要性
- コミュニティ形成による価値創出
今すぐ実践!客単価向上チェックリスト
【基本施策】明日から始められること
□ 既存商品の価格体系見直し
- 松竹梅の3段階設定になっているか
- 最も売りたい商品が真ん中に配置されているか
- 価格差は適切か(1.5〜2倍程度)
□ 関連商品の整理と提案準備
- メイン商品ごとの関連商品リスト作成
- クロスセル用のトークスクリプト準備
- バンドル商品の価格設定
□ スタッフ教育の実施
- アップセル・クロスセルの基本研修
- 顧客ニーズヒアリングスキル向上
- 成功事例の共有
【応用施策】1ヶ月以内に実施すべきこと
□ 顧客データの分析
- 購買パターンの把握
- 顧客セグメント別の傾向分析
- 客単価の低い顧客層の特定
□ 競合分析の実施
- 競合他社の価格戦略調査
- 差別化ポイントの明確化
- 独自の価値提案の策定
□ デジタル施策の導入
- ECサイトのレコメンド機能強化
- メールマーケティングの自動化
- 顧客管理システムの最適化
【戦略施策】3ヶ月以内の中期目標
□ 新商品・サービスの開発
- 既存商品の上位バージョン検討
- サービス化できる要素の抽出
- サブスクリプションモデルの検討
□ 顧客体験の向上
- カスタマージャーニーの見直し
- タッチポイントでの提案機会創出
- アフターサービスの充実
□ 組織体制の整備
- インセンティブ制度の見直し
- KPIの設定と管理体制構築
- 定期的な効果測定の仕組み化
継続的な客単価向上のために
20年間で1,000社以上をサポートしてきた経験から確信を持って言えるのは、客単価向上は一度の施策ではなく、継続的な改善活動だということです。
成功の3つのポイント:
- 顧客価値の追求 – 売上だけでなく、顧客の真の課題解決を目指す
- データドリブンなアプローチ – 感覚ではなく、数値に基づいた意思決定
- 長期的視点 – 短期的な売上増加よりも、持続可能な成長を重視
客単価向上は決して難しいことではありません。正しい知識と継続的な実践があれば、必ず結果は出ます。
今回ご紹介した15の手法の中から、まずは自社の状況に最も適したものを3つ選んで実践してみてください。小さな改善の積み重ねが、やがて大きな成果となって現れるはずです。
平均3倍の効果向上は十分に可能です。 正しい戦略と継続的な実践で、あなたのビジネスも必ず成長できます。