
「当社の新商品が完成しました!自信作です!」
「創業30周年を迎えました。これからも頑張ります!」
「最新の設備を導入しました。機能性が向上しています!」
企業のSNSアカウントを見ていると、このような「報告」であふれています。発信している側からすれば、どれも重要なニュースであり、誇らしい実績でしょう。
しかし、はっきり言います。読者は、あなたの会社や商品そのものには、あなたが思うほど興味がありません。
SNS運用で最もやってはいけないことの一つ、それは「自分の伝えたいこと(発信者視点)」ばかりを一方的に投稿し続けることです。
読者が興味を持っているのは「自分の悩み」と「自分へのメリット」だけです。この視点のズレを修正しない限り、どれだけ投稿を続けてもエンゲージメントは上がらず、集客にはつながりません。
この記事では、なぜ「伝えたいこと」ばかり書いてはいけないのか、そしてどうすれば「読者が知りたいこと」に変換して、反応が得られる投稿を作れるのかを解説します。
「当社の商品は素晴らしい!」という投稿の落とし穴
多くの企業アカウントが陥るのが、「自社の強み」や「商品の特徴(スペック)」を語りすぎてしまうことです。
「この美容液には〇〇成分が配合されています」
「当社の強みは迅速な対応です」
「業界最安値です」
……これらはすべて、売り手側の言葉です。
もちろん、商品の良さを伝えることは大切です。しかし、読者が知りたいのは「その商品が素晴らしいかどうか」ではありません。「その商品を使えば、私の今の悩みが解決するのか?」「私にとってどんな良い未来(ベネフィット)があるのか?」です。
「当社は素晴らしい」という主語が「自社」になっている投稿は、読者にとって他人事です。
主語を「読者(あなた)」に変えない限り、スクロールする指は止まりません。
なぜ「自分の伝えたいこと」ばかり書くとダメなのか(5つの理由)
発信者視点(自分語り)の投稿がSNSで失敗する理由は、心理的要因とアルゴリズム的要因の両面にあります。
1、読者の興味と合致しない
ユーザーはSNSを、暇つぶしか、有益な情報を得るために見ています。知らない会社の「社内行事の様子」や「社長の理念」を見せられても、「へー、よかったね」で終わりです。
自分に関係のない情報は、脳が自動的にフィルタリングしてしまいます。
2、エンゲージメントが生まれない
一方的な宣伝や報告に対して、「いいね」や「コメント」をしようと思う人は稀です。共感もできず、学びもなく、感動もない投稿には、アクションを起こす動機がありません。
3、「宣伝ばかり」と思われ、フォローを外される
毎回「買ってください」「利用してください」「こんなにすごいです」という投稿ばかりだと、読者は「売り込まれている」と感じてストレスになります。結果、ミュートやフォロー解除の対象になります。
4、SNSアルゴリズムに嫌われる(拡散されない)
ここが致命的です。InstagramやX(旧Twitter)のアルゴリズムは、滞在時間やエンゲージメント率を重視します。
読者が興味を持たずスルーする投稿は「価値が低い」と判定され、フォロワーのタイムラインにすら表示されなくなります。
5、競合と差別化できない(みんな同じことを言っている)
「高品質」「安心安全」「迅速対応」といった自社の強みは、競合も同じように主張しています。
スペックや特徴だけで戦おうとすると、結局は「どこも同じ」に見えてしまい、価格競争に巻き込まれます。
「自分の伝えたいこと」ばかり書く典型例
以下は、企業アカウントでよく見かける「発信者視点」の投稿例です。読者が心の中でどう思っているか(ツッコミ)を見てみましょう。
| 発信者視点の投稿(NG) | 読者の心理 |
|---|---|
| 「当社の新サービスをリリースしました!ぜひご利用ください!」 | 「ふーん。で、そのサービスを使うと私にんないいことがあるの? メリットが分からないからスルー。」 |
| 「創業30周年を迎えました!これからもよろしくお願いします!」 | 「おめでとう。でも、私には関係ない話だな。30周年だからって何かお得なことがあるわけでもないし。」 |
| 「当社の強みは、独自の生産管理システムです!」 | 「生産管理? 専門的なことはよく分からないし、興味ないな。」 |
| 「最新の3Dスキャナー設備を導入しました!」 | 「へー、すごい機械だね。でも、私が家を建てる時にそれがどう役立つの? 安くなるの? 早くなるの?」 |
「読者が知りたいこと」に変換する5つのステップ
「伝えたいこと」を捨てる必要はありません。伝え方を変えるのです。以下のステップで変換すれば、同じ内容でも読者に刺さる投稿になります。
【読者視点への変換ステップ】
- ペルソナ(たった一人の読者)を想像する
誰の悩みを解決する商品なのかを明確にします。 - 「So What?(だから何?)」を3回繰り返す
特徴に対して「だから、読者にどんないいことがあるの?」と自問自答し、深掘りします。 - 特徴をメリット(ベネフィット)に変換する
「機能」ではなく「得られる未来」を語ります。 - ビフォーアフターを見せる
利用前と利用後の変化を可視化します。 - 主語を「あなた」にする
「当社は~できます」ではなく、「あなたは~になれます」と言い換えます。
ビフォーアフター比較(発信者視点 vs 読者視点)
具体的に「発信者視点」の文章を「読者視点」に書き換えてみましょう。これだけで、投稿の魅力が劇的に変わります。
| ビフォー(NG・発信者視点) 主語:当社、商品 | ・アフター(OK・読者視点) 主語:あなた(読者) |
|---|---|
| 当社は創業50年の老舗工務店です。 確かな技術力があります。 | 「初めての家づくりで失敗したくない」あなたへ。 50年間で3,200件の施工実績から、ご家族のライフスタイルに最適なプランをご提案します。 |
| 最新のAI見積もりシステムを導入しました。 効率化を実現しています。 | 見積もり待ちのイライラを解消。 従来3時間かかっていた作成が、AIにより15分に短縮。「急ぎで概算を知りたい」という方も、当日中に正確な金額が分かります。 |
| スタッフ全員が国家資格保有者です。 プロフェッショナル集団です。 | 「素人に任せて後悔したくない」という不安に応えます。 全員が国家資格を持っているので、法的手続きから施工管理まで、トラブルのない確実な工事をお約束します。 |
| 新メニューのチーズケーキが登場。 北海道産クリームチーズを100%使用。 | 今週頑張った自分へのご褒美に。 一口食べた瞬間に広がる濃厚なミルク感。北海道産クリームチーズを贅沢に使った、仕事帰りの疲れを癒やす「至福のチーズケーキ」です。 |
| モンドセレクション金賞を受賞しました。 世界が認めた品質です。 | 「品質に妥協したくない」方へ。 世界的な審査機関が認めた品質で、毎日のお肌のケアを格上げしませんか? 使うたびに自信が持てる肌へ導きます。 |
| 当社の経営理念は「誠実」です。 嘘のない商売を心がけています。 | 無理な売り込みは一切いたしません。 「誠実」を掲げる当社では、お客様にとって不要な工事は「必要ない」とはっきりお伝えします。安心してご相談ください。 |
| 高性能な脱毛マシンを導入。 照射スピードが2倍になりました。 | 忙しいママさん必見。 全身脱毛がわずか30分で完了! 照射スピード2倍のマシンだから、お子様のお迎えまでの隙間時間に、サクッとキレイになれます。 |
| 在庫を豊富に取り揃えています。 物流倉庫を拡大しました。 | 「明日使いたい!」に間に合わせます。 豊富な在庫体制により、14時までのご注文は即日発送。急なプレゼントや消耗品の補充も、もう焦る必要はありません。 |
業種別の読者視点の投稿例
業種ごとの具体的な「読者視点への変換例」を見てみましょう。
| 業種 | NG(発信者視点)→ OK(読者視点) |
|---|---|
| 美容室 | NG:「当店は髪質改善トリートメントに力を入れています!独自の薬剤を使用。」 ↓ OK:「『毎朝のセットに30分かかる…』というお悩み、髪質改善で解決しませんか? 施術後は寝グセがつきにくくなり、朝5分でまとまる髪に。忙しい朝にコーヒーを飲む余裕が生まれます。」 |
| 飲食店 | NG:「旬のサンマが入荷しました。脂が乗っています。ぜひお越しください。」 ↓ OK:「秋の味覚で一杯やりませんか? 脂の乗った旬のサンマを、炭火で皮パリパリ、身はふっくらに焼き上げました。冷えた日本酒との相性は抜群。今夜は仕事の疲れを忘れて最高の一杯を。」 |
| 工務店 | NG:「高気密・高断熱の住宅ならお任せください。UA値0.46を実現。」 ↓ OK:「『冬の朝、布団から出るのが辛い…』そんな寒さとはサヨナラ。真冬でもエアコン1台で家中ポカポカ。光熱費も月平均5,000円ダウンし、家計にも体にも優しい暮らしを実現します。」 |
| コンサルタント | NG:「私のノウハウを詰め込んだセミナーを開催します。参加者募集中。」 ↓ OK:「『集客が安定しない』と夜も眠れない経営者様へ。3ヶ月で問い合わせを2倍にした具体策を公開。精神論ではなく、明日から使えるテンプレートをお渡しするので、持ち帰ってすぐに実践できます。」 |
| EC通販 (アパレル) | NG:「新作のコートが入荷。ウール90%で暖かいです。」 ↓ OK:「着膨れしたくないけど、寒がりなあなたへ。ウール90%なのに驚くほど軽い。シュッとしたシルエットで、真冬のデートや通勤でも『寒くないのにおしゃれ』を叶えます。」 |
読者視点型、投稿の7つのチェックリスト
投稿を作成したら、公開する前に以下のリストでチェックしてください。これらをクリアしていれば、それは「読者のための投稿」になっています。
- 読者の悩み・課題に触れているか:(「〇〇でお困りの方へ」など)
- 「だから何?」に答えているか:(スペックの羅列になっていないか)
- 「あなたも〇〇できる」という未来が見えるか:(ベネフィットがあるか)
- 自社の自慢・宣伝だけになっていないか:(主語が「当社」ばかりでないか)
- Before/Afterの変化が分かるか:(どんな良い変化があるか)
- 具体的な数字・エピソードがあるか:(信頼性があるか)
- 「いいね」「保存」「シェア」したくなるか:(読者に役立つ情報か)
「伝えたいこと」ではなく「知りたいこと」を発信する
SNSは、テレビCMのような「一方的な広報ツール」ではありません。画面の向こうにいる読者との「対話ツール」です。
読者は、あなたの会社の商品そのものに興味があるわけではありません。「自分の悩みを解決してくれるもの」「自分の生活を良くしてくれるもの」にしか興味がないのです。
「伝えたいこと」をそのまま投稿するのは、相手の事情を考えずに自分の話ばかりする人と同じです。それでは嫌われてしまいます。
逆に、「読者は何を知りたいだろう?」「どう言えば読者のメリットになるだろう?」と考えることは、相手への思いやりです。その思いやり(読者視点)が投稿に乗ったとき、初めてエンゲージメントが生まれ、アルゴリズムが味方し、集客という成果につながります。
今日から投稿を作る時は、まず自問してください。
「これは、私が言いたいことか? それとも、読者が知りたいことか?」
この視点の転換こそが、SNS集客成功への最大の鍵です。
