
個人事業主やフリーランスにとって、紹介は一番ありがたい入口です。広告費がかからず、話が早く、値段の交渉も少ない。紹介で回っている人を見ると、うらやましくなります。
紹介をもらうやり方をネットで調べてみると、だいたい同じことが書いてあります。
紹介してほしいと伝えましょう。
一度ではなく何度も伝えましょう。
まず自分からギブしましょう。
異業種交流会に行きましょう。
紹介の件数に目標を立てて管理しましょう。
これらを言われたとおりにやった人が、紹介増えないことがあります。紹介してくださいと伝えたのに紹介が来ない、交流会に通ったのに仕事につながらない。
そういうご相談がよくございます。
しつこく紹介をお願いする必要はありません。
紹介が増えるかどうかは、お願いの回数ではなく、誰をお客さんにしているか?で決まるからです。
紹介が増えるかどうかは、どんなお客さんを集めたか?で決まります
一番大事なところを申し上げます。
紹介を増やしたいなら、自分の仕事や商品やサービスに合ったお客さんを集めることです。
自分の仕事や商品、サービスに合った人が集まっている状態で口コミや紹介をうながすのが、一番良いパターンだからです。
自分に合ったお客さんほど大事なものはありません。合っている人は、こちらが頼まなくても人に話してくれます。勝手に営業してくれる人も出てくるでしょう。
逆に、合っていないお客さんからは紹介が来ません。出たとしても、また合わない人が来ます。合わない人を増やすほど、紹介の質が落ちていきます。
紹介を増やすというのは、自分に合った人と付き合うということです。
ここで、選べるほど客がいないとおっしゃる人がおられます。
その場合でも、今いるお客さんの中で「この人は合っている」という人は何人かいるはずです。起業前なら知り合いや友だちがいるでしょう。
その人たちに似た人を増やす方向で動けばいいのです。全員を相手にした話ではありません。
自分に合っているお客さんを見分ける
合っているかどうか?は、感覚ではなく事実で見分けます。見分けるポイントは4つです。
1、プレミアカスタマーかどうか。
単価が高く、続けて買ってくれる優良なお客さんのことです。安いから選んでいるのではなく、中身を見て選んでくれています。この層は紹介する相手も同じような層になります。
2、ニーズが濃いかどうか。
少しニーズを持っている人ではなく、深いニーズを抱えてる人です。困り方が深いほど解決したときの実感が大きいので、人に話します。ニーズとウォンツはここではまとめます。
3、得意分野を喜んでくれるかどうか。
自分が一番力を出せる部分を、評価してくれる人です。こちらが苦手なところを求められていないという意味でもあります。喜ばれている部分が自分の得意分野と一致していると、提供する質も上がります。
4、ギブの精神で付き合いやすいかどうか。
貸し借りが自然に行き来する相手です。こちらが何かしたときに返してくれる、こちらから頼んでも嫌がらない。この関係が作れる人とは、長期間ご紹介いただけます。
この4つに当てはまる人と付き合います。何人かいるなら、その人たちがどこから来たのかを思い出します。その経路を太くするのが、紹介を増やす最短の道です。
コミュニティも、自分に合うところを選びます
お客さんと同じことが、付き合う場所にも当てはまります。
自分に合ったコミュニティに所属する。もしくは、自分に合ったコミュニティを自分で作る。やることはこれだけです。
商工会や業界団体のような集まりには、大きい会社も入っています。
ただ、そこで濃い人間関係を作っているわけではありません。その場で一人一人と関係を作ることは小さい会社にもできます。空いているのはこの部分です。
どの集まりでもいいわけではありません。合わない場所に通い続けても紹介は出ません。参加して3回たっても仕事の話が面白くならない場所なら、そこは合っていないと見ていいです。
コミュニティを自分で作るほうが良い場合もあります。
同じような規模、同じような客層を相手にしている人を5人集めて、月に一度話す場を作る。これだけで紹介が回り始めることがあります。大きな集まりの中で埋もれるより、小さく自分で作ったほうが早いです。
関係を続ける手段も必要です。
その場で終わると、半年後には忘れられています。法人を相手にしている人なら、フェイスブックでつながっておくのが効果的です。
投稿を通じて何をしている人かが伝わり続けるので、紹介が必要な場面で思い出されます。使い方は大阪で開催しているフェイスブックのセミナーで扱っています。
お願いすれば紹介は増えます。ただし戦略が変わります
ここは正確に書いておきます。
ご紹介をお願いしたほうが、紹介の数は増えます。これは事実です。何度も伝えたほうが、思い出してもらえる回数も増えるからです。
ただし、それをやり続けるのは、差別化戦略ではなくなります。
差別化戦略というのは、商品の特徴や中身で選ばれる状態を作る戦い方です。向こうから「この人に頼みたい」と来る形を目指します。お願いをする動きは、商品メインで考えないケースも出てきます。
戦略の考え方そのものは小規模事業者の差別化方法に書いています。自分がどの道を取るかを決めてから、紹介のもらい方を決めるのが良いでしょう。
ちなみに単価を上げる戦略を選ぶと、新規の問い合わせは減ります。これは紹介に限らず、その戦略の性質です。詳しくは売り込まない営業方法に書きました。
紹介の仕組みは、バレると効かなくなります
単価やブランドを狙う場合、紹介が勝手に起きるように仕組み化する方法があります。
よく使われるのは、紹介したほうが得になるシステムです。紹介してくれた人に割引や特典を渡す形です。
この仕組みには落とし穴があります。それがバレると効かなくなるという点です。
ありきたりな紹介システムは、紹介をうながすためのものだと気づかれた段階で、紹介されなくなることが多いです。
理由は単純で、紹介された側が「この人は特典のために自分を紹介したのか」と思うからです。紹介した人の善意が、報酬で動いたように見えてしまいます。
紹介する人の側も居心地が悪くなります。知り合いに「紹介すると自分が得をする」と知られたくないからです。場合によって、認知的不協和も働きます。
だから仕組みを作るなら、特典で動かす形をメインにするのは避けます。代わりになるのは次の形です。
紹介しやすいものを渡す
自分が何をしていて、どういう人を相手にしているかが分かるページを1つ用意する。紹介する人はリンクを送るだけで済みます。
無料で渡せるものを用意する
相談の無料枠、 クーポン券、簡単な資料など。紹介する人が「これもらえるから行ってみたら」と軽く言える形にすると、紹介しやすくなります。
ここで真剣に売り込みにつながると分かると、渡しにくくなります。
どちらも紹介者に得をさせる仕組みだけでなく、紹介する手間を減らす仕組みでもあります。これならバレても紹介しやすい言い訳があります。
ギブだけの関係は長続きしません
紹介のコツでよく書かれているのが「まず自分から与えましょう」という話です。これは半分しか正しく書いていません。
人間関係で、ギブだけの関係は長続きしないからです。
与え続けている側は、どこかで疲れます。もらい続けている側も、だんだん気まずくなります。そして気まずさが溜まると、距離ができます。紹介が出るどころか、関係そのものが続きません。
目指すのはギブアンドテイクの関係です。どうやってこれを作るかが、紹介のコツになります。
具体的には、自分がギブからはじめて、どんどんお客さんに頼ることです。
これは多くの人がやっていません。お客さんには迷惑をかけてはいけない、こちらが与える側でいなければ、と考えるからです。ところが頼られた側は、それほど嫌がりません。むしろ頼られることで関係が対等になります。
頼み方の例を挙げます。自分の業種と関係ない相談をする。相手の得意分野について教えてもらう。人を探しているときに心当たりを聞く。仕事の内容について意見を求める。
どれも相手の時間を少し使う行為ですが、相手は自分が役に立ったと感じます。そしてこちらは借りを作ります。借りがある状態のほうが、次に相手を助ける自然な理由になります。
ギブだけを続けている関係より、貸し借りが行き来している関係のほうが長く続きます。紹介はその中から出てきます。
最初のギブの始め方は、イベントかボランティアです
ギブアンドテイクの関係を作るには、まず自分がギブをどうおこなうか?から始まります。
個人事業主にとって効果があるのは2つです。
イベントを立ち上げることです
勉強会でも交流会でも構いません。
規模は小さくていい。主催する側に立つと、参加した人全員に対してギブしている状態になります。しかも主催者は覚えられます。参加者として10回通うより、1回主催したほうが名前が残ります。
ボランティア活動をおこなうことです
地域の活動でも業界の活動でも構いません。見返りを計算せずに動いている人は信用されます。そしてそういう場で知り合った人は、仕事の場で知り合った人より紹介が出やすい。
どちらも時間はかかりますが、費用はほとんどかかりません。広告を打つお金がない段階で取れる手としては、効率が良いほうです。
注意点を1つ書きます。
どちらも集客目的が透けると効かないことがあります。メインとなる目的が集客だと考えないことです。紹介システムがバレると効かなくなるのと同じ構造です。
紹介される前に、ハズレがない状態にしておきます
ここまでが本題ですが、前提を1つ確認しておきます。
誰かに人を紹介するとき、紹介する人は自分の信用がかかっています。もし商品やサービスがひどかったら、怒られるのはあなたですが、気まずくなるのは紹介した人です。
だから商品やサービスの中身が安定していない間は、紹介が増えても困ることになります。一度でもハズレを出すと、その人からの紹介は止まります。
直近の10件を思い出して、全部に自信を持って「同じ品質で出せた」と言えるかどうか。言えないなら、紹介を増やす前に中身を整えるほうが先です。
もう1つ、紹介してもらったあとの報告があります。
会えたこと、お礼。この2行でいい。仕事につながらなかった場合も伝えてください。紹介した人は「断られて気まずくなっていないか」を心配しているので、そこが解消されます。
成約したときだけお礼を言って、成約にならなかったときは黙っている。これをやると、次から紹介されにくくなります。報告は、ギブアンドテイクの関係を作る一歩でもあります。
よくある質問
紹介について実際に聞かれることをまとめます。
Q: 自分に合ったお客さんを集めるには、何から始めますか?
A: 今いるお客さんの中で合っている人を数えるところからです。
プレミアカスタマーか、ニーズが濃いか、得意分野を喜んでくれるか、ギブの精神で付き合いやすいか。この4つに当てはまる人を探して、その人たちがどこから来たのかを思い出してください。
その経路を太くするのが先です。新しい集客手段を増やすより早く効きます。
Q: 合わないお客さんは断るべきですか?
A: 断れる状況なら断ったほうが良いです。
合わない人からは合わない人が紹介されるので、放っておくと客層が合わないものになります。
売上が足りない時期に無理に断ると生活が苦しくなるので、売上が安定してきてから選ぶようにします。今のお客さんを切る必要はありません。
Q: 紹介のお礼として、謝礼を渡すべきですか?
A: 渡さないほうが続きます。特典で紹介をうながす仕組みは、必要な場合もありますが、長期的には効かなくなります。
紹介された側も「特典のために紹介されたのか」と感じさせてはいけません。謝礼を渡すなら、相手の商品を買う、相手に紹介を返す、といった形でも良いでしょう。
Q: 自分でコミュニティを作るのは、ハードルが高くないですか?
A: 3人で始められます。同じくらいの規模で、似た客層を相手にしている人を集めて、月に一度話す場を作る。これで十分です。場所もカフェや自分のお店、会社で構いません。大きな集まりの中で埋もれるより、小さく自分で作ったほうが効果的です。
Q: お客さんに頼るというのが、どうしてもできません。
A: 自分の業種と関係ない話から始めてください。相手の得意分野について教えてもらう、人を探しているときに心当たりを聞く。仕事を頼むわけではないので、相手の負担は小さい。それでも相手は役に立ったと感じます。いきなり大きなことを頼む必要はありません。
Q: イベントを立ち上げても人が集まりません。
A: 人数を目標にしないでください。3人でも成立します。回数を重ねると集まってきます。
ただし、自分の商品やサービスの説明会になっていると人は来なくなります。主催する目的は、集客ではない関係を作ることです。
Q: 紹介だけで食べていけるようになりますか?
A: なる人もいますが、時間がかかります。
紹介は相手の都合で起きるので、今月何件来るか?を自分で決められません。数が必要な時期は、検索や広告のように自分で量を動かせる方法も並行してください。紹介は、その上に積んでく形にすると安定します。
まとめ
紹介を増やす話は、だいたい「お願いの仕方」で終わります。今回はそこに重きを置いていません。
紹介が増えるかどうかは、どんなお客さんを集めたかでほぼ決まります。
自分もしは自社に合った人が集まっていれば、頼まなくても人に紹介してくれます。合っていない人が集まっていれば、何度お願いしても紹介されにくいです。
だからやることは、自分に合った人と付き合うことです。お客さんも、所属するコミュニティも同じです。合うところを選ぶか、自分で作りましょう。
そして関係はギブアンドテイクが理想です。
ギブだけの関係は続きません。どんどん頼り、頼られる形にする。ギブの入口としては、イベントを立ち上げるかボランティアなど集客とあまり関係のないところをコンセプトにしてください。そのほうが個人事業主には効率が良いです。
最後に1つ、この記事は「お願いしなくていい」と書いていますが、「何もしなくていい」とは書いていません。
自分に合う人を選ぶ、コミュニティを作る、お客さんに頼る、イベントを自分で開く。どれも自分から動く話です。待っているだけでは紹介は来ません。
お願いするのをやめた分の時間を、自分に合う人と付き合う時間に回す。それがこの紹介を増やすコツです。
