やってはいけないSNS投稿:専門用語が多すぎてフォロワーを遠ざける理由

つちや たけし
1,000社以上の店舗集客と会社集客をサポートしてきたWebマーケティングプランナー。複数のYouTubeチャンネル運営経験を持ち、複数のSNSやサイトを運営、実践的なマーケティング戦略の立案・実行を得意とする。「理論より実践」をモットーに、現場で使える具体的なノウハウを提供している。

「ROIを最適化するため、KPIを設定してPDCAを回しながらCVRの向上を図ります」

もしあなたがこんな投稿をSNSでしているなら、今すぐ見直してください。

なぜなら、専門用語を多用したSNS投稿は、フォロワーを獲得するどころか遠ざけてしまう最も危険な投稿パターンの一つだからです。

私は大阪を拠点に、1,000社以上の企業のWebマーケティングをサポートしてきました。同時に、日々SNSでの情報発信も行っています。その経験から断言できるのは、専門用語だらけの投稿は確実にいいね!を減らすということです。

しかし、なぜ多くの専門家や企業が専門用語を使いたがるのでしょうか。そして、なぜそれがフォロワーを遠ざけてしまうのでしょうか。今日は、この問題の根本原因と解決策を、実例を交えながら詳しく解説していきます。

目次

なぜ専門用語を使いたがるのか

まず理解してほしいのは、専門用語を使いたがる心理には正当な理由があるということです。専門家として活動している方なら、誰でも経験があるはずです。

一つ目の理由は「専門性をアピールしたい」という気持ちです。

長年の経験と知識を積み重ねてきた専門家にとって、専門用語は自分の専門性を示す重要なツールです。「この人は本当に詳しいんだな」と思ってもらいたい気持ちは、とてもよくわかります。

二つ目は「正確性を重視したい」という姿勢です。

専門用語には正確で厳密な定義があります。曖昧な表現で誤解を招くよりも、正確な専門用語を使って伝えたいという考えも理解できます。

三つ目は「同業者とのコミュニケーション」を意識してしまうことです。

普段、同じ業界の人たちと専門用語を使って会話しているため、SNSでも同じ感覚で投稿してしまうのです。

これらの気持ちや姿勢は決して間違っていません。しかし、SNSというプラットフォームにおいては、これらが逆効果になってしまうのが現実です。

フォロワーが専門用語を嫌う理由

では、なぜフォロワーは専門用語だらけの投稿を嫌うのでしょうか。この理由を理解することが、改善の第一歩となります。

最も大きな理由は「理解できない不安」です。

人間は理解できないものに対して本能的に不安を感じます。専門用語だらけの投稿を見たとき、フォロワーの心に浮かぶのは「この内容、私には関係ないんだろうな」「難しすぎて理解できない」という感情です。

私のクライアントの中に、非常に優秀なITコンサルタントがいました。技術的な知識は業界トップクラスだったのですが、SNSの投稿は「DXを推進するためのSaaSソリューションを活用し、BtoBプラットフォームでのOMO戦略を展開」といった具合に、専門用語のオンパレードでした。

結果的に、フォロワー数は伸び悩み、投稿への反応もほとんどありませんでした。せっかくの専門知識が、全く活かされていない状況だったんです。

二つ目の理由は「距離感の問題」です。

専門用語を多用することで、投稿者と読者の間に大きな距離感が生まれます。「この人は雲の上の存在で、私とは住む世界が違う」と感じさせてしまうのです。

SNSの本質は「コミュニケーション」です。一方的に情報を発信するメディアではありません。親しみやすさや共感が重要な要素となるプラットフォームで、距離感を作ってしまうのは致命的です。

三つ目の理由は「行動を起こしにくい」ということです。

専門用語だらけの投稿を見て、「いいね」や「コメント」をしたいと思うでしょうか。「間違ったことを言ってしまったら恥ずかしい」「専門的すぎて何をコメントしていいかわからない」と思ってしまいます。

結果的に、エンゲージメントが下がり、SNSのアルゴリズムからも低く評価され、さらに表示されにくくなるという悪循環に陥ってしまいます。

「わかりやすさ」がもたらす驚くべき効果

では、専門用語を使わずに、わかりやすい言葉で発信すると、どんな効果があるのでしょうか。実際の事例を交えながら説明します。

先ほどのITコンサルタントの例に戻りましょう。

私は彼と一緒に、投稿内容を根本的に見直しました。「DXを推進するためのSaaSソリューション」を「会社の仕事をもっと楽にするWebサービス」に、「OMO戦略」を「オンラインとオフラインを組み合わせた販売戦略」に変更しました。

さらに、具体的な事例を使って説明するようにしました。「製造業のA社では、従来1週間かかっていた在庫管理が、クラウドサービスを導入することで1日で完了するようになりました」といった具合です。

結果は劇的でした。

フォロワー数は3か月で2.5倍に増加し、投稿への「いいね」や「コメント」も数倍以上に増えました。そして何より、実際のビジネスにつながる問い合わせが月0件から月2件に増加しました。

この事例が示すように、わかりやすい言葉で発信することで、より多くの人にリーチでき、より深いエンゲージメントを獲得できるようになります。

専門用語を「日常語」に翻訳するテクニック

では、具体的にどうやって専門用語をわかりやすい言葉に翻訳すればいいのでしょうか。私が実際に使っている方法をお教えします。

最も効果的なのは「中学生でもわかる言葉で説明する」ことです。これは決して読者を馬鹿にしているわけではありません。複雑な概念を誰にでもわかるように説明することは、実は高度なスキルなんです。

例えば、マーケティング分野でよく使われる専門用語を翻訳してみましょう。

「CVR(コンバージョンレート)」→「お客さんが実際に商品を買ってくれる割合」
「KPI(重要業績評価指標)」→「目標達成のために追いかけるべき数字」
「PDCA」→「計画→実行→確認→改善のサイクル」
「ROI(投資収益率)」→「使ったお金に対してどれくらい利益が出たか」

このように翻訳することで、専門知識がない人でも内容を理解できるようになります。

さらに効果的なのは「身近な例え」を使うことです。複雑な概念を、誰もが経験したことのある身近な出来事に例えることで、一気に理解しやすくなります。

例えば、SEO(検索エンジン最適化)を説明するとき、

「SEO対策とは、図書館で本を探しやすくするために、本の背表紙にわかりやすいタイトルを書いたり、適切な棚に置いたりするようなものです」と説明すれば、多くの人が理解できます。

業界別「専門用語あるある」と改善例

ここで、様々な業界でよく見かける「専門用語あるある」と、その改善例を紹介します。あなたの業界にも当てはまるものがあるはずです。

IT・Web業界のあるある

❌ 悪い例:「UIUXを改善してエンゲージメントを向上させ、LTVの最大化を図ります」

✅ 良い例:「ホームページを使いやすくして、お客さんに長く愛される仕組みを作ります」

❌ 悪い例:「B2BのSaaSソリューションでDXを推進」

✅ 良い例:「会社の業務を効率化するWebサービスで、デジタル化をお手伝い」

金融・保険業界のあるある

❌ 悪い例:「リスクヘッジのためのポートフォリオ最適化をご提案」✅ 良い例:「万が一のリスクに備えて、バランスの良い資産運用をご提案」

❌ 悪い例:「アセットアロケーションの見直しによる運用効率化」✅ 良い例:「投資先のバランスを見直して、より効率的な資産運用を実現」

医療・健康業界のあるある

❌ 悪い例:「エビデンスに基づいたプロトコルで治療効果を最大化」

✅ 良い例:「科学的に証明された方法で、最も効果的な治療を提供」

❌ 悪い例:「QOLの向上を目指したリハビリテーション」

✅ 良い例:「生活の質を高めるためのリハビリプログラム」

コンサルティング業界のあるある

❌ 悪い例:「ボトルネックを特定してKPIを最適化し、ROIを向上」

✅ 良い例:「問題の原因を見つけて改善し、投資した分以上の利益を生み出します」

このように翻訳することで、同じ内容でもはるかに親しみやすく、理解しやすい投稿になります。

「専門性」と「わかりやすさ」の絶妙なバランス

ここで重要な疑問が生まれます。

「専門用語を使わなければ、専門性をアピールできないのでは?」
「簡単な言葉ばかり使っていて、プロとして信頼してもらえるの?」

これは非常に重要な指摘です。確かに、専門性とわかりやすさのバランスを取ることは簡単ではありません。

しかし、このバランスこそが、SNSで成功するための鍵なんです。

ここで「サンドイッチ構造」という方法があります。

まず、わかりやすい言葉で概念を説明し、その後で正式な専門用語を紹介し、最後にもう一度わかりやすい言葉でまとめるという構造です。

例えば、

「お客さんが実際に商品を買ってくれる割合のことを、マーケティングの世界では『CVR(コンバージョンレート)』と呼びます。この数字を上げることで、同じ広告費でもより多くの売上を得ることができるんです。」

この方法を使うことで、初心者にも理解しやすく、かつ専門性もアピールできます。さらに、専門用語を知らなかった読者にとっては「勉強になった」という価値も提供できます。

SNSプラットフォーム別の「言葉選び」戦略

SNSのプラットフォームによって、適切な言葉選びは変わってきます。それぞれの特性を理解して、最適化することが重要です。

Twitter(X)での言葉選び

Twitterは情報の拡散スピードが早く、短時間で多くの人の目に触れる可能性があります。そのため、一瞬で理解できる言葉選びが重要です。

専門用語を使う場合でも、必ず一言で説明を加えるようにしています。「CVR(購入率)が改善!」「SEO(検索対策)のコツ」といった具合です。

Instagramでの言葉選び

Instagramは視覚的なプラットフォームなので、画像と組み合わせて説明できます。専門用語を使う場合は、図解やインフォグラフィックで視覚的に説明することが効果的です。

また、ハッシュタグでは専門用語を使いつつ、投稿本文では平易な言葉を使うという使い分けも有効です。

YouTubeでの言葉選び

私が運営している複数のYouTubeチャンネルでも、この原則を徹底しています。動画の場合は、口頭での説明に加えて、テロップで補足説明を入れることも効果的です。

読者との「対話」を意識した投稿作成

専門用語を避けるだけでなく、読者との対話を意識することも重要です。一方的な情報発信ではなく、読者との双方向のコミュニケーションを意識した投稿を心がけましょう。

効果的なのは、投稿の最後に質問を投げかけることです。「あなたの会社では、どんな方法で業務効率化を図っていますか?」「同じような経験をされた方はいらっしゃいますか?」といった質問により、コメントを促すことができます。

また、読者の質問に対して丁寧に回答することも重要です。その際も、専門用語を避けて、わかりやすい言葉で説明することを心がけてください。

専門家こそ「やさしい言葉」を使おう

長い記事になりましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

専門家だからこそ、難しい概念を誰にでもわかる言葉で説明できる。これは高度なスキルであり、ほんとうの専門性の証明だと思います。あなたの知識と経験を、より多くの人に届けるために、ぜひ「やさしい言葉」を使った投稿をやってみてください。

SNSは、専門家が一般の人とつながるための素晴らしいツールです。専門用語の壁を取り払うことで、あなたの専門知識がより多くの人の役に立ち、結果的にビジネスの成功にもつながるはずです。

今日から、投稿する前に「この言葉、みんなにわかるかな?」と一度立ち止まって考えてみてください。その小さな配慮が、大きな成果の違いを生み出します!

つちや たけし
1,000社以上の店舗集客と会社集客をサポートしてきたWebマーケティングプランナー。複数のYouTubeチャンネル運営経験を持ち、複数のSNSやサイトを運営、実践的なマーケティング戦略の立案・実行を得意とする。「理論より実践」をモットーに、現場で使える具体的なノウハウを提供している。
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