
ランディングページ(LP)を作成したものの、まったく成果が出ない。このような相談は、Webマーケティングをサポートしてきた中で、最も多く受ける内容の一つです。
原因の一つに、「LPを作れば自動的に人が集まる」という根本的な誤解にあります。どれだけ美しいデザインのLPを作っても、どれだけ魅力的なオファーを用意しても、そこに人が流れてこなければ、成果はゼロです。
この記事では、多くの企業が陥る「流入方法を考えずにLPだけ作成して予算がなくなる」という典型的な失敗パターンと、その本質的な解決策を解説します。特に、予算が限られている中小企業や個人事業主の方に向けて、現実的で実践可能な方法をご紹介します。
なぜ「LPを作っただけ」では成果が出ないのか
まず、根本的な問題を理解する必要があります。ランディングページは「アクセス数を集めるツール」ではなく、「コンバージョンツール」です。
LPの本来の役割
LPの役割は、すでに興味を持っている人を「購入」「申し込み」「資料請求」などの具体的なアクションに導くことです。言い換えれば、LPは、「クロージング」のツールであり、「アクセス数を集める」のツールではありません。
飲食店で例えるなら
- LP = 店内の内装、メニュー、接客
- 流入施策 = 看板、チラシ、口コミ、SNS発信
どれだけ素晴らしい内装と美味しい料理を用意しても、その存在を知ってもらえなければ、お客様は来店しません。LPも全く同じです。
「LPを作れば人が来る」という誤解が生まれる背景
この誤解が生まれる背景には、制作会社の説明不足や、発注側の知識不足があります。
制作会社側の問題
- 「LPを作れば売上が上がります」という営業トーク
- デザインやコンテンツの話ばかりで、流入方法に触れない
- 制作後の運用や広告運用をサポートしない
発注側の問題
- Web集客の仕組みを理解していない
- 予算のほとんどを制作費に使ってしまう
- 「とりあえず作ってから考えよう」という姿勢
この両者のミスマッチが、「LPを作ったのに成果が出ない」という悲劇を生んでいます。
よくある失敗パターン:予算配分の間違い
私が見てきた中で最も多い失敗パターンが、予算配分の誤りです。
ケース1:予算100万円の場合
- LP制作費:80万円
- 広告費:20万円(1~2ヶ月で消化)
- 結果:広告を止めたら流入ゼロ、成果が続かない
ケース2:予算50万円の場合
- LP制作費:50万円
- 広告費:0円
- 結果:完成したLPにアクセスがほぼゼロ、ただの「作品」で終わる
ケース3:予算30万円の場合
- LP制作費:30万円
- 広告費:0円
- SNS運用:時間はあるが知識がなく効果が出ない
- 結果:中途半端な状態で放置
本来あるべき予算配分の考え方
LP制作を検討する際、本来は以下のような予算配分を考えるべきです。
総予算100万円の場合(推奨)
- LP制作費:30~40万円(総予算の30~40%)
- 広告費(初期3~6ヶ月分):40~50万円(総予算の40~50%)
- 改善・運用費:10~20万円(総予算の10~20%)
総予算50万円の場合(推奨)
- LP制作費:20~25万円(総予算の40~50%)
- 広告費(初期3~6ヶ月分):20~25万円(総予算の40~50%)
- 改善・運用費:5~10万円(総予算の10~20%)
この配分であれば、LPを作った後も継続的に流入を確保でき、データを見ながら改善していくことが可能です。
LP制作前に必ず決めておくべき5つのこと
流入方法を含めた全体設計をせずにLP制作を始めると、必ず失敗します。以下の5つは、制作を始める前に必ず決めておくべき項目です。
リスティング広告(Google広告、Yahoo!広告)
- メリット:即効性が高い、ターゲティング精度が高い、効果測定しやすい
- デメリット:広告費が継続的に必要、競合が多い分野は単価が高い
- 予算目安:月10~30万円(業種により変動)
- 向いているケース:明確なニーズがあるBtoBサービス、資格講座、不動産など
SNS広告(Facebook、Instagram、TikTok、X)
- メリット:詳細なターゲティングが可能、ビジュアルで訴求できる、比較的低予算から開始可能
- デメリット:潜在層へのアプローチが中心、効果が出るまで試行錯誤が必要
- 予算目安:月5~20万円
- 向いているケース:BtoCサービス、美容・健康商品、習い事、アプリなど
SEO(検索エンジン最適化)
- メリット:長期的には費用対効果が高い、広告費不要
- デメリット:効果が出るまで3~12ヶ月かかる、LPは構造上SEOに不利
- 予算目安:SEO専用のコンテンツページ制作費(月5~20万円)
- 向いているケース:長期的な視点で取り組める企業、ブログやオウンドメディアとの併用
コンテンツマーケティング(ブログ、オウンドメディア)
- メリット:資産として蓄積される、信頼性が高まる、広告費不要
- デメリット:効果が出るまで時間がかかる、継続的なコンテンツ制作が必要
- 予算目安:記事制作費(月10~30万円)または内製(人件費)
- 向いているケース:専門性の高いBtoBサービス、教育系、コンサルティングなど
SNS運用(Instagram、X、TikTok、YouTube)
- メリット:無料で始められる、ファンが育つ、拡散力がある
- デメリット:時間と労力が必要、すぐに成果が出るとは限らない
- 予算目安:0円~(運用代行を依頼する場合は月10~30万円)
- 向いているケース:ビジュアルで訴求できる商品・サービス、若年層向け商材
既存顧客へのメール配信
- メリット:コストが低い、すでに関係性がある顧客へのアプローチ
- デメリット:新規顧客の獲得にはならない
- 予算目安:メール配信ツール代(月数千円~数万円)
- 向いているケース:既存顧客が一定数いる企業、リピート商材
LP制作前に「どの流入方法を使うか」「予算はいくらか」「誰が運用するか」を明確に決めておかないと、作ったLPは誰にも見られない「孤島」になります。
現実的な予算設定
前述の通り、LP制作費だけでなく、流入施策の予算も含めた総予算を設定する必要があります。
総予算30万円以下の場合
- LP制作は格安サービスやツールで自作(5~10万円)
- 残りの予算を広告費に充てる
- または、LPは後回しにして、既存のホームページ+SNS運用に注力
総予算50万円程度の場合
- LP制作費:20~25万円(シンプルな構成)
- 広告費:20~25万円(3ヶ月分)
- 改善費:5万円
総予算100万円以上の場合
- LP制作費:30~50万円(しっかりとした構成・デザイン)
- 広告費:40~60万円(6ヶ月分)
- 改善・運用費:10~20万円
重要なのは、「LP制作に予算の大半を使ってしまわない」ことです。
ターゲットと訴求内容の明確化
流入方法によって、LPのデザインや訴求内容も変わります。
リスティング広告からの流入の場合
- 検索キーワードと広告文とLPの内容が一致している必要がある
- ファーストビューで「探していた情報がある」と一瞬で分からせる
- 比較検討されることを前提とした情報設計
SNS広告からの流入の場
- ビジュアル重視のデザイン
- 広告のクリエイティブとLPのトンマナを揃える
- 潜在層向けなので、問題提起から入る構成
SEO・コンテンツマーケティングからの流入の場合
- 情報量が多め
- テキストコンテンツの充実
- 段階的に信頼を築く構成
流入方法を決めずにLPを作ると、誰に向けた、どこから来た人のためのページなのかが曖昧になり、結果として誰にも刺さらないページになってしまいます。
目標設定(KPI)
流入施策と連動した現実的な目標設定が必要です。
設定すべきKPI
- 月間流入数(セッション数)
- コンバージョン率(CVR)
- コンバージョン数(CV数)
- 顧客獲得単価(CPA)
- 広告費用対効果(ROAS)
現実的な数値例(リスティング広告の場合)
- 月間広告費:20万円
- クリック単価:200円
- 月間流入数:1,000セッション
- コンバージョン率:3%
- 月間CV数:30件
- CPA:6,667円
この数値が自社のビジネスモデルと合っているかを事前に確認しないと、「LP制作費と広告費をかけたのに赤字」という事態になります。
予算がない場合の現実的な対処法
「すでにLPを作ってしまって予算がない」「予算が限られているがLPを作りたい」という場合、以下の対処法があります。
対処法1:無料・低予算でできる流入施策から始める
広告費がなくても、時間と労力をかければ流入を作ることは可能です。
SNS運用(無料)
Instagram、X、TikTok、YouTubeなどのSNSアカウントを開設し、ターゲット層に向けた情報発信を継続的に行います。
実践のポイント
- 週3~5回以上の投稿
- フォロワーとの積極的なコミュニケーション
- プロフィールにLPのリンクを設置
- ストーリーズやハイライトでLPへの導線を作る
- ハッシュタグを活用したターゲティング
効果が出るまで:3~6ヶ月以上 向いている商材:ビジュアルで訴求できるもの、BtoC商材、若年層向け
コンテンツSEO(低予算)
LPとは別に、SEO対策されたブログ記事やコラムページを作成し、そこからLPへ誘導する方法です。
実践のポイント
- ターゲットが検索しそうなキーワードで記事を作成
- 月2~4本の記事を継続的に投稿
- 記事の中でLPへの導線を自然に作る
- 記事は2,000~4,000文字程度の充実した内容に
効果が出るまで:3~12ヶ月 向いている商材:専門性の高いBtoBサービス、比較検討型の商材
既存顧客へのメール配信(低予算)
すでに顧客リストがある場合、メールでLPを案内します。
実践のポイント
- 既存顧客向けの特別オファーを用意
- メールの件名と本文でLPへの興味を喚起
- 配信は週1~月2回程度
効果が出るまで:即効性あり 向いている商材:既存顧客にリピート購入や追加購入してもらう商材
対処法2:少額広告費でテストする
予算が限られている場合は、まず少額で広告をテストし、効果が出る見込みがあるかを確認します。
少額テストの予算例
- 月5万円×3ヶ月=15万円
- この期間でCVRやCPAのデータを取得
- 採算が合いそうなら予算を増やす
- 合わなければ別の流入方法を検討
重要なのは、「効果が出るかどうか分からないのに大金を投じない」ことです。
対処法3:LP制作費を抑えて流入予算を確保
すでに高額なLP制作費を払ってしまった場合は取り返せませんが、これから作る場合は以下の方法でコストを抑えられます。
格安LP制作サービスを利用
- ペライチ、STUDIO、Wixなどのツール:月額数千円~
- クラウドソーシングで個人に依頼:5~15万円
- テンプレート利用:3~10万円
初期は最小限の構成で作成
- まずはシンプルな構成(2~3セクション)で作る
- 効果が出てから追加セクションを作る
- 完璧を目指さず、60点で公開して改善していく
浮いた予算を広告費や運用費に充てることで、「作ったけど誰も見ない」状態を回避できます。
対処法4:制作会社に運用まで含めて相談する
LP制作会社の中には、制作後の広告運用までワンストップで対応してくれるところもあります。
運用込みのサービスのメリット
- 流入方法を前提とした制作ができる
- 制作と運用の連携がスムーズ
- データを見ながら改善してくれる
費用の目安
- LP制作費:30~50万円
- 広告運用代行費:月5~10万円(広告費の20%程度)
- 月額広告費:月10~30万円
トータルで見ると高く感じますが、制作と運用がバラバラになって失敗するよりは、確実に成果が出やすくなります。
「流入方法」と「LP」はセットで考えるべき理由
ここまでの内容を整理すると、LPと流入方法は切り離せない関係にあります。
リスティング広告用のLP
- 検索キーワードとの一致性重視
- ファーストビューで即座に理解できる構成
- 競合との比較要素を含める
- フォームは簡潔に
SNS広告用のLP
- ビジュアル重視のデザイン
- 広告のクリエイティブとトンマナを揃える
- ストーリー性のある構成
- 感情に訴える要素を強化
SEO・コンテンツ経由のLP
- テキスト量が多めでも可
- 段階的に信頼を築く構成
- 内部リンクの設置
- ロングテールキーワードへの対応
つまり、流入方法を決めずにLPを作ると、どの流入元にも最適化されていない中途半端なページになってしまいます。
データが取れなければ改善もできない
LPは作って終わりではなく、アクセス解析のデータを見ながら改善していくものです。しかし、流入がなければデータも取れません。
必要なデータ
- どのセクションで離脱しているか
- どのボタンがクリックされているか
- どのデバイスからのアクセスが多いか
- どの流入元のCVRが高いか
流入がない状態では、これらのデータが取れないため、LPが良いのか悪いのかも判断できません。
「作ってから考える」では遅い
流入方法を後から考えようとすると、以下の問題が発生します。
問題1:予算がなくなる
制作費に予算を使い果たし、広告費が確保できない
問題2:LPが流入方法に合っていない
後から「SNS広告で集客しよう」と決めても、LPがそれに最適化されていない
問題3:時間のロス
制作後に「流入方法を考える→合わないので修正→また費用がかかる」という悪循環
問題4:モチベーション低下
せっかく作ったのに成果が出ず、プロジェクト自体が頓挫する
これらを避けるためには、制作前の段階で全体設計を行うことが不可欠です。
LP制作は「全体設計」の一部として考える
ランディングページは、それ単体では機能しません。流入施策、広告運用、データ分析、改善といった一連のプロセスの中の一つの要素に過ぎません。
LP制作で失敗しないための鉄則
1. 流入方法を先に決める どうやって人を集めるかを決めてから、それに最適化したLPを作る
2. 予算配分を間違えない LP制作費は総予算の30~50%程度に抑え、流入施策の予算を確保する
3. 最初から完璧を目指さない 60点のLPをすぐに公開して、データを見ながら改善していく
4. 運用体制を確保する 作って終わりではなく、継続的に運用・改善できる体制を作る
5. 現実的な目標を設定する CPAやROASが事業として成立する数値になるかを事前に計算する
もしあなたが今、「LPを作ったけど誰も来ない」という状況にあるなら、まず流入方法を整理し、少額でも良いので広告をテストするか、時間をかけてSNS運用やコンテンツSEOに取り組むことをお勧めします。
逆に、これからLP制作を検討しているなら、制作会社に「流入方法も含めて相談したい」と伝えるべきです。もし制作会社が「それは専門外です」と言うなら、その会社に依頼すべきではありません。
LP制作は投資です。投資である以上、リターンを得るための全体設計が不可欠です。「作ること」自体が目的ではなく、「成果を出すこと」が目的であることを、常に忘れないでください。