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個人事業主の価格の付け方 相場より先に「誰に売るか」で決まります

つちや たけし
1,000社以上の店舗集客と会社集客をサポートしてきたWebマーケティングプランナー。複数のYouTubeチャンネル運営経験を持ち、複数のSNSやサイトを運営、実践的なマーケティング戦略の立案・実行を得意とする。「理論より実践」をモットーに、現場で使える具体的なノウハウを提供している。

自分のサービスにいくらの値段を付けるか。これは個人事業主にとって一番しんどい判断だと思います。安くすれば自分が苦しくなるし、高くすれば売れなくなる。

正解が見えないまま、なんとなく周りに合わせた金額にしている方も多いはずです。

値付けの記事を読むと、だいたい3つの考え方が出てきます。原価に利益を乗せる、競合の価格に合わせる、お客さんが感じる価値から逆算する。どれも間違っていません。

ただ、この3つを知っても値段は決まりません。実際に金額を左右しているのは、もっと手前にある条件です。

それが「誰に売るか」です。同じ商品でも、売る相手が変われば付けられる価格が変わります。今回は、そこから話を始めます。

目次

いきなり高単価で勝負しようとしないでください

最初にお伝えしたいのは順番の話です。

スキルがまだ未熟なうち、あるいは商品やサービスのクオリティが十分でないうちは、安く入るほうがいいです。

高い値段を付けて売れないまま時間が過ぎるより、安くても実際に売って、お客さんの反応を見ながら中身を良くしていくほうが前に進みます。

高単価で始めたくなる気持ちは分かります。安く売ると自分の価値を下げる気がするし、単価が低いと数をこなさないと食べていけない。だから最初から高く売ろうとする。

でもクオリティが追いついていない状態で高く売ると、別の問題が起きます。期待との差が大きくなるので、お客さんが満足しません。満足しない人はリピートしないし、紹介もしてくれません。

高く売れた分だけ、評判への跳ね返りが大きくなります。

安く入るのは、値段を下げることが目的ではありません。実績を作って、腕を上げて、価格を上げられる状態に持っていくための入口です。

安く入って赤字になったら

ここで現実的な問題が出てきます。安く入ったけれど、その値段では赤字になる。生活が回らない。

この場合、できればクオリティが上がるまでは他の収入で支えたいところです。別の仕事で利益を出して、こちらの赤字を埋める。その間にスキルを上げる、仕入れ先を強化する、知識を取り込む。クオリティが上がってから価格を上げる。

これは遠回りに見えますが、順番としては正しいです。中身が良くなれば価格を上げる根拠ができるので、値上げの説明もしやすくなります。

問題は、それができない場合です。他の収入がない、今すぐこの事業で食べていく必要がある。

そうなると高く価格を設定するしかありません。ただ、正直に言ってこれは非常に難しいです。なぜ難しいのか、次で説明します。

市場の価格は、すでにある程度決まっています

値付けで多くの人がつまずくのは、ここを知らないままだからです。

市場の価格はある程度決まっています。そして、それ以上の単価で売ることは現実的には難しいです。

たとえばあなたがホームページ制作を10万円でやろうとしたとき、同じような内容が5万円で売られている市場なら、10万円で売るには理由が必要になります。理由を説明できなければ、お客さんは安いほうを選びます。当たり前の話です。

だから「価値を伝えれば高く売れる」という話は、半分しか正しくありません。市場の相場から大きく離れた価格は、伝え方を工夫しても通りません。相場より少し高いくらいまでなら説明で埋まりますが、2倍3倍は埋まりません。

できれば相場より少し安いくらいのところで勝負したいです。そこが一番売りやすい。それがうまくいかない場合、価格を上げることになり、販売は厳しくなります。

では、相場よりはるかに高く売ることは不可能なのか。方法はあります。

市場より高く売るなら、閉ざされた業界に売ります

相場よりはるかに高い価格で売るのであれば、閉ざされた市場、情報のあまりない業界に販売をかけるのがいいです。

これはどういうことか。相場が形成されるには、買い手が比べられる状態が必要です。複数の業者の価格を並べて見られるから相場ができます。

逆に言えば、比べられない市場では相場が機能しません。業界の中に情報が流れていない、そもそもそのサービスを使った経験がない人が多い、ネットで調べる習慣がない。こういう業界では、価格が相場に収束していません。

もうひとつ、人間関係ができた会社も同じです。すでに信頼がある相手なら、しばらくは多少高くても買ってくれます。毎回見積もりを取り直して一番安いところに替える、という動きをしないからです。

ここで誤解してほしくないのは、情報がない人から高く取れという話ではないことです。閉ざされた業界では、そもそも誰もそのサービスを提供していないことが多いです。

だから高いのではなく、他に選択肢がないから価格が下がっていない。そこに入って、きちんとした仕事をすれば、価格が維持されます。

開かれた市場で同じことをやろうとすると、価格競争に巻き込まれて終わります。

つまり、誰に売るかで価格が変わります

ここが結論です。

どの相手に販売するかによって、価格は変動します。商品が同じでも、売る先が変われば付けられる金額が変わる。だから値付けは、商品を見て決めるものではなく、売る先を見て決めるものです。

判断するポイントは3つです。

ひとつ、どの業界に販売をかけるのか。 ふたつ、その業界は閉ざされた業界なのか、開かれた業界なのか。 みっつ、ライバルはどれぐらいいるのか。

この3つで価格の付け方が変わります。

売る先の状態付けられる価格やること
閉ざされた業界、情報が少ない相場より高くできるその業界に入る経路を作る
人間関係ができている相手しばらくは高くても通る関係を切らさない
開かれた市場、ライバルが多い相場より少し安いところ価格以外の差を作る
ライバルが少ない開かれた市場相場並みから少し上早めに実績を積む

もちろん最終的には商品のクオリティ次第です。閉ざされた業界に入っても、中身が悪ければ続きません。

店舗の場合は立地が価格に影響します

ここから販売の場による違いを見ていきます。

店舗を構えて集客する場合、価格は立地に影響されます。これが厄介です。

なぜなら、立地の周囲の競合店と比べられるようになるからです。お客さんは歩いて回れる範囲で店を比べます。隣の通りに同じような店があって、そこが安ければ、価格はそこと並べられます。

自分では「うちはサービスが違う」と思っていても、通りがかりの人にはその差が見えません。見えるのは外に出している価格です。だから立地を決めた時点で、付けられる価格帯がある程度決まってしまいます。

これは逆にも働きます。周囲に競合がいない立地なら、比べる相手がいないので価格を保ちやすい。駅前の便利な場所は人が多いですが競合も多い。

少し外れた場所は人が少ないぶん比較されにくい。どちらが良いかは、その商売が「通りがかりで入る商売」か「探して来てもらう商売」かで変わります。

探して来てもらう商売なら、立地の不利は情報発信で埋められます。通りがかり頼みの商売だと、立地がそのまま価格を縛ります。

ECサイトなら、価格より見せ方の勝負になります

インターネットでECサイトを使って通販をする場合は、さらに競合が増えます。

店舗なら競合は歩ける範囲でしたが、ネットでは全国、場合によっては海外まで並びます。検索すれば価格が一覧で出てくる状態です。比べられる相手の数が桁違いになります。

この状況では、価格の付け方を工夫するより、どのように商品を見せるかのほうが効いてきます。見せ方にコツが必要になります。

具体的に効くのは社会的証明です。お客様の声を載せる、推薦者の声をもらう、レビューをたくさん集める。これを積み上げることで、同じ価格でも選ばれる確率が変わります。

なぜ効くかというと、ネットでは実物を確認できないからです。確認できないものを買うとき、人は他の人の判断を参考にします。レビューが30件あって評価が高い商品と、レビューが0件の商品が同じ値段で並んでいたら、前者が選ばれます。

つまりECでは、価格を下げる前にやることがあります。レビューを集める。声を載せる。推薦してもらう。ここをやらずに価格だけ下げると、利益が減るだけで競合には勝てません。

単価を上げたいなら、価値を付け足します

最後に、価格を上げていく方向の話です。

同じ商品の値段をそのまま上げるのは難しいです。市場の相場があるからです。でも、他の価値を付け足すことで単価を上げることはできます。

分かりやすいのがセミナーです。コンサルティングのように、商品に加えて教える場を用意する。使い方の講座を付ける。導入後のフォローを付ける。こうすると、比べられる相手がいなくなります。相場が存在しない組み合わせになるからです。

これは値上げとは違います。値上げは同じものの価格を上げることなので、お客さんに説明が必要になります。価値の付け足しは、中身が変わったうえでの価格設定なので、比較の対象が変わります。

付け足すものは大がかりでなくて構いません。相談に乗る回数を決める、導入後3か月のサポートを付ける、使い方の資料を作る。自分の手間が増えすぎないものを選んでください。続けられない約束を付けると、あとで苦しくなります。

なお、すでに付けた価格を上げる場合は伝え方の順番が重要になります。そちらは値上げの伝え方を扱った記事で詳しく書いているので、あわせて読んでください。

値段を決める5つのステップ

ここまでの内容を手順にします。

ステップ1は、今のクオリティを正直に見ることです。リピートが起きているか、紹介が出ているか。この2つが起きていないなら、まだ高く売る段階ではありません。

ステップ2は、売る先を決めることです。どの業界に売るのか。その業界は閉ざされているか開かれているか。ライバルは何社いるか。ここを調べます。

ステップ3は、その市場の相場を調べることです。同業の価格を実際に見てください。公開されていない業界なら、知り合いに聞くか、見積もりを取ってみるしかありません。

ステップ4は、相場のどこに自分を置くか決めることです。基本は相場より少し安いところ。閉ざされた市場や関係ができている相手なら、相場より上も狙えます。

ステップ5が、売り方を整えることです。店舗なら立地との関係、ネットならレビューと声。単価を上げたいなら価値を付け足す。

この順番だと、原価計算から始めるより現実に近い金額が出ます。原価は下限を決めるだけで、上限を決めているのは市場と売る相手です。

価格のつけ方 計算ツール

価格のつけ方 計算ツール

赤字にならない下限と、売る先から見た上限を出します。値段は計算だけでは決まらないので、相場と売る先もあわせて見ます

1. いくら必要か

2. どれだけ働けるか

3. 誰に売るか

これを下回ると赤字

-/時間

おすすめの価格帯

-/時間

これ以上は通りにくい

-/時間

計算の内訳

この数字の使い方

左の下限は、原価から出した数字です。これを下回ると働くほど赤字になります。右の上限は、売る先から見た数字です。市場の価格はある程度決まっているので、ここを超えると伝え方を工夫しても通りません。値段はこの2つの間で決めます。下限が上限を超えてしまう場合は、価格の問題ではなく、経費か稼働時間か売る先か商品のどれかを変える話になります。

自分の商売に合わせて相談する →

※この計算は目安です。実際の価格は商品の内容・地域・取引条件によって変わります。税金や社会保険料の正確な金額は税理士にご確認ください。

よくある質問

価格の相談でよく聞かれることをまとめました。

Q: 相場より安く入ると、あとから値上げできなくなりませんか?

A: 値上げはできます。ただし条件があります。安く入っている期間に、中身を良くしておくことです。クオリティが変わっていないのに価格だけ上げると、お客さんは納得しません。

逆に、腕が上がって提供できるものが増えていれば、説明がつきます。最初から「今の価格は開業時の価格です」と伝えておく方法もあります。

Q: 原価から計算した金額が、相場より高くなってしまいました。

A: その場合、価格を上げるのではなく原価を下げるか、売る先を変えるかの判断になります。相場より高い金額は、開かれた市場では通りません。

仕入れを見直す、工程を整理する、あるいは閉ざされた業界に売り先を変える。どれもできない場合は、その商売自体が今の形では成り立っていないということなので、商品の内容から考え直したほうがいいです。

Q: 閉ざされた業界をどう見つければいいですか?

A: 自分が過去に働いた業界、親族や知人がいる業界から探すのが現実的です。外から入るのが難しいからこそ閉ざされているので、つながりがないと入れません。

もうひとつの見つけ方は、検索してみることです。その業種とサービス名で検索して、同業の情報がほとんど出てこないなら、情報が流れていない業界の可能性があります。

Q: 安い価格で始めたら、安い客ばかり来てしまいました。

A: よくある状態です。価格で選んだ人は価格で離れるので、値上げすると抜けていきます。ここで大事なのは、全員を引き止めようとしないことです。

価格を上げる段階では、ある程度の離脱は想定内です。そのうえで、残ってほしいお客さんには個別に先に伝える。順番を分けると、残る人と抜ける人が分かれます。

Q: レビューをどうやって集めればいいですか?

A: 仕事が終わった直後に頼むのが一番成功率が高いです。満足度が最も高い瞬間だからです。後日まとめて依頼すると記憶が薄れていて書いてもらえません。

それと、何を書けばいいか分からない人が多いので、聞きたいことを2つか3つに絞って質問の形で渡すと書いてもらいやすくなります。数は要りません。3件あれば形になります。

Q: セミナーをやる自信がありません。他に価値を足す方法はありますか?

A: あります。相談に乗る回数を決めて付ける、導入後のサポート期間を付ける、使い方の資料を作って渡す、よくある質問をまとめて渡す。どれも人前で話す必要はありません。

大事なのは、比べられる相手がいない組み合わせを作ることです。自分が無理なく続けられるものを選んでください。

まとめ

個人事業主の価格の付け方は、計算で出るものではありません。売る相手で決まります。

スキルやクオリティが十分でないうちは、いきなり高単価を狙わず安く入ってください。それで赤字になるなら、他の収入で支えながらクオリティを上げる。それができないなら高く設定するしかありませんが、これは非常に難しいです。

難しい理由は、市場の価格がすでにある程度決まっているからです。相場から大きく離れた価格は、伝え方では埋まりません。

はるかに高く売りたいなら、閉ざされた市場、情報の少ない業界、人間関係ができている相手に売ってください。比べられない場所では相場が機能しません。

だから見るべきは3つです。どの業界に売るのか。その業界は閉ざされているか開かれているか。ライバルは何社いるか。

店舗なら立地の周囲と比べられます。ECならさらに競合が増えるので、価格より見せ方とレビューの勝負になります。単価を上げたいなら、セミナーなどで価値を付け足して、比べられる相手がいない状態を作ってください。

基本は相場より少し安いところ。そこが一番売りやすい場所です。そこで実績を積んで、クオリティを上げて、それから価格を動かしていく。この順番を守ってください。

自分の商売だとどこに価格を置くべきか決めきれない方は、大阪のマーケティングセミナーを診断するページで近いテーマを探してみてください。どれも1対1のサポート形式でやっています。

つちや たけし
1,000社以上の店舗集客と会社集客をサポートしてきたWebマーケティングプランナー。複数のYouTubeチャンネル運営経験を持ち、複数のSNSやサイトを運営、実践的なマーケティング戦略の立案・実行を得意とする。「理論より実践」をモットーに、現場で使える具体的なノウハウを提供している。
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