
元請けから流れてくる仕事だけで回していると、金額も納期も相手の都合で決まります。利益率は上がらず、仕事が止まったときに打つ手がありません。
ネットで答えを調べますと、答えはだいたい同じ内容です。
マッチングサイトに登録しましょう
販路を開拓しましょう
営業力を強化しましょう
中間マージンを取り戻しましょう
どれも間違っていません。ただ、何から手をつけるかがあまり書かれていません。
販路開拓と営業力強化は、やることの名前であって手順ではないからです。
直接受注を増やすために一番効くのは集客です。そして集客の進め方は職種によって変わります。 製造業とクリエイティブ系では、前提になっている市場の状況が違うからです。
下請けから抜けるために一番効くのは集客です
直接受注が取れない理由を分解すると、2つしかありません。知られていないか、知られているのに選ばれていないか。
下請けの状態が長い会社は、ほぼ前者です。(例外はあります)
技術はあっても、最終的なお客さんがその会社を知りません。元請けが窓口になっていたので、知られる必要がなかったわけです。
ここで営業力の強化から入ると行き詰まります。誰に営業するかのリストが手元にないためです。元請けの担当者しか知らない状態から、いきなり最終客への営業は始まりません。
だから順番としては、知ってもらう集客が先に必要となります。
向こうから問い合わせが来る状態を作って、そこから商談に入る形です。問い合わせが来れば、相手が何に困っているかも分かった状態で話せます。
利益率の話もここにつながります。
中間マージンを取り戻すという言い方がありますが、実際には自分でお客さんを見つけられるようになった対価が利益率として戻ってきます。見つけられなければ、元請けの取り分は妥当な手数料のままです。
集客の土台は3つあります
集客といっても手段は多くあります。下請けから抜ける段階で必要なものは、次の3つに絞れます。
1、ホームページは必須です
最終客は、発注の前に必ず社名を検索します。そこで何も出てこない会社に、初めての取引で金額の大きい仕事は出しません。
法人を相手にする場合はさらにはっきりしています。社内で稟議を通す必要があり、与信の確認もあり、他社との比較もあります。ホームページは最低限の身だしなみとして要求されます。
担当者が「この会社です」と社内に見せる材料がないと、話が前に進みません。
立派なものを作る必要はありません。載っているべきものが載っていれば足ります。
何を作っているか、どんな規模の仕事を受けられるか、これまでの実績、連絡先。
この4つが抜けていると、問い合わせの手前で離脱します。
自分で作ろうとして止まってしまうケースも多くあります。自作を断念してプロに依頼した解体工事業者の事例がありますが、手が止まっている間はそのまま機会を逃している時間となります。
2、SEOは必須です
ホームページを作っただけでは、検索しても出てきません。社名で検索したときに出るだけでは、既に知っている人にしか届きません。
必要なのは、社名を知らない人が打つ言葉で見つかることです。「○○加工 小ロット」「△△ 短納期」のような言葉です。下請けの立場では、こうした言葉で探されることを考えてこなかったはずです。
この部分は半年から1年の単位で時間がかかります。そのため集客の中で最初に着手するものになります。何をどの順番で書くかはSEOのセミナーでも扱っています。
3、SNSもやったほうがよいです
検索は待つしかありませんが、SNSはある程度情報発信できます。
ただしSNSだけで法人の受注が決まることは少ないです。見かけた人がホームページを見に行き、そこで判断されます。入口がSNS、判断の場がホームページという分担になります。
広告については予算によります。使える予算があれば検索広告で前倒しできますし、なければSEOとSNSで進めることになります。広告は止めた瞬間に流入も止まるので、止まらない土台を先に作るほうが順番としては合っています。
ここから先は職種で方法が分かれます
先ほどの3つの方法は、職種を問わず同じです。それぞれのやり方が変わります。
製造業とクリエイティブ系では、市場で今起きていることが違います。同じ「下請けから抜ける」という言葉でも、やるべきことが別になります。
クリエイティブ系は一流しか残らない方向に進んでいます
デザイン、動画編集、ライティング、イラスト。こうした仕事を下請けで受けている場合、厳しい見通しであると先に申し上げておきますm(_ _)m
一流しか残らない傾向が、ますます加速していくと見ています。
原因はAIです。
単純な制作物は、AIだけで素人でも作れるようになりました。 バナー、簡単なロゴ、短い文章、素材の加工。以前なら外注していたものが、社内の誰かが数分で用意できます。
この流れは続いていきます。
1、下請けの単価が下がります
だんだんと下請けの仕事は減ります。元請けが外注していた作業のうち、簡単なものから社内に戻るからです。(もちろん業種によって変わります。下請けがなくならない会社もあるでしょう。)
クリエイティブ系の場合、仕事量が少なくなる可能性があります。
2、残るのは判断が要る仕事です
AIが作れるのは、形が決まっているものです。何を作るべきかを決める仕事は残ります。
誰に向けて、何を伝えて、どういう反応を狙うのか。
この設計を引き受けられるかどうか?が分かれ目になります。作業を請ける立場から、決める立場に移るという言い方もできます。
直接受注は、この仕事とセットになります。
元請け経由では作業しか回ってきませんが、最終客と直接話せば、何を作るべきかの相談から入れます。同じ制作物でも、下請けなのか直なのかで単価が変わります。
3、実績の見せ方が変わります
下請けの期間が長いと、実績を出せない問題にぶつかります。元請けの名前で納品しているため、自分の仕事として見せられないことが多いからです。
ここは直接受注を取り始めてから解決する部分です。最初の数件は条件が悪くても、見せられる実績として受ける判断もあります。そのうえで同業の中でどこを強みにするか?を決めます。
制作会社がこの立場から新規受注を増やす進め方はWeb制作会社の新規受注セミナーで扱っています。
製造業は、ものが売れない時代が前提になります
製造業の場合は別の前提から入ります。
業種によりますが、ものが売れない時代です。 だから売上は、業種によって減ることが多くなります。
これは営業のやり方が悪いという話ではありません。市場そのものが縮んでいる業種があるという意味です。その状態で下請けから抜けようとすると、直接受注の相手も同じように縮んでいることになります。
1、縮んでいるかどうかを先に見ます
自社の売上が落ちているとき、原因が自社にあるのか市場にあるのかで打つ手が変わります。
取引先の数が減っていないのに単価が落ちている、同業も同じように落ちている、製品が一度買えば長く使えるもので買い替えが起きていない。こうした状態であれば、市場側の話になっている可能性があります。
縮んでいる市場で直接受注を増やしても、取り合いが激しくなるだけで終わります。そこで打ち手が変わります。
2、体験に価値が出ています
ものが売れない一方で、体験には価値が出ています。 だから体験させる形を作ります。
具体的には次のようなものです。
- 工場見学
- ツアー
- ワークショップ
どれも、作っているものではなく作っている場所と人を見せる形です。下請けの立場では、ここを見せる機会がありませんでした。元請けの向こうに客がいたためです。
3、体験がファンにつながります
体験させることがファンを形成するのにつながります。
単発の販促と違うのはこの点です。工場見学に来た人は、その製品を見る目が変わります。誰がどこでどう作っているかを知っているためです。同じ値段でも、知らない製品と並んだときに選ばれます。
そして体験に来る人は、こちらを知ったうえで来ています。下請けの構造で一番足りなかった「知られている状態」が、ここで作られます。
狭い範囲で選ばれる形を作るという点では、ニッチ市場の見つけ方に書いた話と同じ方向になります。体験の場は、客が何に反応するかを直接見られる場でもあります。
下請けを続けるという判断もあります
すべての会社が下請けを抜けるべきだとは考えていません。
下請けには、営業の手間がかからないという利点があります。元請けが客を見つけて、条件を整えて、仕事を回してくれます。その対価として利益率が下がっているという構造です。
抜けるべきかどうかは、2つを比べて決まります。
1つは、元請けが取っている分の金額。
もう1つは、自分で客を見つけるためにかかる費用と時間です。ホームページ、SEO、SNS、体験の場の準備。これらに人を割けない状態で始めると、本業が回らなくなります。
元請けが1社に偏っているかどうかも判断に入ります。1社に依存していれば、その1社の都合で全部が止まります。複数の元請けから受けている状態なら、急ぐ必要は下がります。
うまくいかない進め方
同じ目的で動いていても、結果につながりにくい場合があります。
1、マッチングサイトの登録で終わらせる
登録すれば問い合わせが来る、という形に見えます。実際には、同じ条件の会社が並んだ中で金額を比べられる場所です。
直接受注のつもりで入っても、相手にとっては比較の候補が1つ増えただけになります。価格で比べられる場所に立つという点では、下請けと同じ構造です。
2、ホームページを作って終わりにする
作っただけでは検索に出てきません。社名で検索した人にしか届かない状態です。
下請けから抜ける段階では、社名を知らない人に見つかることが目的になります。公開してから書き足していく期間が要ります。
3、全部の手段を同時に始める
ホームページ、SEO、SNS、広告、体験の場。一度に始めると、どれも中途半端で止まります。
本業を回しながら進めるので、使える時間は限られています。土台の3つから順に進めるほうが、止まらずに続きます。
よくある質問
下請けから抜ける段階で実際に聞かれることをまとめます。
Q: 元請けに知られると関係が悪くなりませんか?
A: 直接受注を始めたことで取引を切られるケースはあります。ただし元請けの客と同じ相手を取りに行った場合に起きやすいです。別の客層や別の地域から始めれば、重なりません。進める前に、元請けの商圏と客層を確認しておくと判断できます。
Q: ホームページにお金をかけられません。
A: 金額をかけることと、載せるものを揃えることは別です。何を作っているか、受けられる仕事の規模、実績、連絡先。この4つが揃っていれば、安く作ったサイトでも問い合わせは来ます。足りないのは、たいてい実績の部分です。
Q: 実績を公開できない契約になっています。
A: 元請けの名前と製品名を出さない形で書けるかを確認してください。「どの業界の」「どういう条件の仕事を」「どれくらいの量」までなら出せる場合があります。それも難しければ、直接受注した案件を最初の実績にする形になります。
Q: SEOはどれくらいで効きますか?
A: 半年から1年かかります。書く量と、狙う言葉の競合の強さで変わります。すぐに問い合わせが必要な状況なら、SEOと並行してSNSや広告を使うことになります。
Q: クリエイティブの仕事ですが、AIで作れるものばかりです。
A: 作業そのものを売る形から離れる必要があります。何を作るべきかを決める部分、つまり誰に向けて何を伝えるかの設計は残ります。直接受注にすると、その相談から入れます。
Q: 工場見学に人を呼べる規模ではありません。
A: 人数は関係ありません。1人でも、自社の製品を使う立場の人が来れば成立します。大人数を集める形ではなく、呼びたい相手を決めて個別に案内する形から始められます。
Q: ワークショップのネタがありません。
A: 普段やっている作業の一部をそのまま出す形で足ります。新しい企画を考える必要はありません。自社では当たり前の工程が、外の人には初めて見るものになります。
Q: 体験の場を作っても、すぐに売上になりません。
A: 単発では売上になりません。来た人の連絡先が残る形にして、そのあと継続して連絡する部分まで設計しておく必要があります。設計がないまま開催すると、1回で終わります。
Q: 市場が縮んでいる業種です。それでも直接受注を狙う意味はありますか?
A: 意味は変わります。売上を伸ばすためではなく、利益率を守るための動きになります。縮んでいる市場では、中間に人が入っている分の重さが効いてきます。ただし縮み方が大きい場合は、扱うものを変える判断が先に来ることもあります。
Q: 何から始めればよいか分かりません。
A: ホームページに載っているものを確認するところからになります。製品、規模、実績、連絡先。この4つが揃っていなければ、他の手段を足しても問い合わせは受け取れません。
まとめ
下請けから抜けるまでにかかる時間を、順番で並べておきます。
最初の1か月でやることは、ホームページに載っているものを揃える部分です。製品、受けられる仕事の規模、実績、連絡先。ここを飛ばすと、後の手段が全部無駄になります。
次の3か月から半年は、検索で見つかるための期間です。社名ではなく、客が打つ言葉で出てくるようにします。この期間は問い合わせが来ないので、SNSを並行して運用していきます。
半年から1年たつと、検索からの問い合わせが入り始めます。ここで初めて、相手を選べる状態になります。
職種による分かれ道は、この流れの途中で出てきます。
最後に1つ、抜けることが全部の会社にとって正解ではありません。元請けが取っている分と、自分で客を見つけるためにかかる費用と時間を比べたうえでの判断になります。元
請けが1社に偏っているなら急ぐ理由があり、複数から受けているなら急ぐ確率が下がります。
